【ゲーム感想】ユニコーンオーバーロード

SRPGはどうも苦手なのだけど、ヴァニラウェアは「十三機兵防衛圏」がとんでもない名作だったのでと思って5時間遊べる体験版に手を出した結果、終わった頃には本編予約していたユニコーンオーバーロードです。約1ヶ月かかりきりになって76時間で難易度はTACTICALのトゥルーエンドまで終わらせたのですが、いやこれ本当に良いゲームですね。面白かった……。

内容的にはあれもこれもと要素を詰め込んだ「ぼくのかんがえたさいきょうのSRPG」的なゲームで、そうだよねそれができたら嬉しいよねをこれでもかと詰め込んでいるのですが、それがちゃんとゲームの面白さとして一つの方向を向いて、バランス面も奇跡的に成立しているので言葉を失うというかなんというか。「十三機兵防衛圏」もそういう類の「それができれば面白かろうが気が遠くなるし普通の会社なら誰かが止めそう」なゲームだったのですが、これもまさしくそれ。作り込みと情熱がちょっとおかしいので、開発に10年かかったってそれはそうだろうというか、その間もっとシンプルにして出しましょうよってならずに真正面から気合と根性で作り切る社風が怖いわって思います。結果として凄いものができて遊べるので、ユーザーとしてはこんなに有り難いことはないのですが。

 

さて、私がSRPGが苦手なのは、1マップが長くて後半煮詰まってくると段々しんどくなってくるところだったのですが、このゲームの良いところはかなりサクサクと進んで消化試合を感じないところ。戦闘はオートだし、移動も停止と二倍速ができる。他にも戦闘前には予測ダメージがほぼ正確に出るし、戦闘前の近隣ユニット入れ替えだとか、拠点に戻れば別拠点にワープできたりとか、細々とストレスを感じさせない仕様になっているのが良い感じ。

でも、ライトで甘やかされてるゲームなのかというとそれは大間違いで、プレイヤーをやるべきことに集中させて、それにあたってあまりに難しくなり過ぎず、変に手間がかかり過ぎないための仕様だと感じます。じゃあプレイヤーのやるべきことって何なのかというと、このゲームは「仕組みを作る」ゲームなのかなと。全てがそのために作られたシステムであり、そしてそこに深い深い沼があるという。

 

「仕組みを作る」ゲーム

このゲーム、ゼノイラという帝国の支配から大陸を救う解放軍の物語なので、最大で5キャラ×10ユニットの部隊を編成して、リアルタイムで移動させながら敵の拠点を落としていく形です。そしてそのユニット編成こそがすべての肝。キャラごとに何十も存在するクラスには有利不利があって、その組み合わせを前列後列のどこに配置するのか、様々な効果を持つ装備を誰にどうつけるのかまでが基本。この時点でどうやっても必ず強いユニットというものは作れなくて、どんなに強いクラスにも勝てない相手がいるというのがバランスの妙になります。

物理攻撃には圧倒的に硬いクラスのホプリタイは魔法攻撃の前ではバターのように溶けるし、魔法使いをはじめとする歩兵を蹂躙する騎馬部隊はグリフォンナイトの前になすすべもなくやられる。そのグリフォンナイトは弓兵相手にいとも簡単に落ちる……みたいな関係性。それをバランスよく組み合わせて爆発力は無いがある程度万能な部隊にするのか、相手を特化した組み合わせにしておいて運用でカバーするのかが悩みどころ。でも特化させて上で相互補完のためにまとめて部隊を動かそうにも移動速度が合わなかったり、まとまって動いてたらマップ上のギミックやブレイブスキル(マップ上で使えるスキル)で一網打尽にされたりと、どうやっても解けるけれど絶対の最適解が無いというのがとにかく面白いポイント。だからやった人の数だけ解法があって、それを模索してああでもないこうでもないとすることがなんと楽しいゲームなのか。

 

そしてここまででも気が遠くなるほど様々な組み合わせが試行できるのですが、このゲームの本体というか、最大の肝になるのは「作戦」と呼ばれるシステムだと思います。

戦闘がオートであるこのゲームで、キャラクターがどのように動くかを設定できる行動パターンが「作戦」なのですが、これほぼNPCの戦闘アルゴリズムを作る機能。キャラクターの持っているスキルに対して実行条件をかなり細かく設定可能な上に、その優先順位をつけられるので、まず一人のキャラとしての行動の最適化だけでもかなり考えることがあります。そしてこれが部隊の単位になると、誰が誰にバフをするか、攻撃をカバーするか、どういう行動にシナジーがあるのか、役割は被っていないかなどなど考えることは飛躍的に広がっていきます。更に装備によってできることが変わったり、クラスチェンジでできることが広がったり、相手部隊への対策を組み込んだり、部隊間のバランスやマップ上でできるブレイブスキルやアイテムの仕様まで前提に組み込めば、できることはほぼ無限と言っても言い過ぎではないかと。

この作戦はデフォルトのままでも十分遊べるのですが、これが上手く動くかどうか次第で、同じ編成であっても与えるダメージや受けるダメージが大幅に変わってくるのが一番面白いところ。そうなってくるともう無限に作戦を弄りはじめ、編成画面を開いているだけで1時間たっていたみたいなこともざらにあります。特にこのゲーム、戦闘の後に新たな仲間の参加や雇用、フィールド散策(新装備の入手)、クラス開放や編成拡大が待っているので、戦闘→フィールド散策→再編成→戦闘でサイクルが回り始めるとやめどころを見失います。新しい街が出てきたら装備を買って試したいから次の戦闘をやったら仲間が増えて新しい編成を試したいから戦闘をして……のエンドレス、気づけば時間は溶けてなくなる沼の中という中毒性が凄いです。たのしい。

 

この「作戦」が中心になったシステム、もちろん本番は実際の戦闘になるのですが、ゲームとしてやるべきことはどちらかというと編成の方にあると私は思っています。というのも、このゲーム、オート戦闘中のランダム要素がものすごく少ないんですね。もちろん命中率等の関係でまぎれはあるのですが、基本的には整然と作戦で定められた行動をキャラクターが取っていく。本来であれば人間には調子や士気もあれば言うとおりに動かないやつもいるはず……ですがこのゲームはそんなことなくてすべからくみんな超優秀です。だから、こちらの立てた作戦がほぼ全てであって、そういう意味では非常にピュアな戦術ゲームになっています。

そうなると、再現性が高いのだから大事なのは事前の準備です。もちろん戦闘中の部隊操作やスキルやアイテムの切りどころなど、プレイヤーが即興で対応しなければならないこともありますが、大部分は編成画面を開いてうんうん唸っている時間によって決まっていると言っても過言ではありません。キャラクターの行動一つ一つから組み上げた戦術が、想定されるパターンを読み切って思った通りに動く時の快感。思った通りに動かなかった時のトライアンドエラー。新しい玩具が手に入った時にそれを仕組みの中にどう組み込むか。それがこのゲームの本質で、そういう意味で仕組み作りのゲームなのだと思います。そこが好きな人には徹底的に刺さるゲームになっていると感じました。

 

それでもって、いくら言っても言い足りないくらい凄いのは、この果てしないバリエーションを生み出せる仕組み作りのゲームが、どういう方向性で何をしてもかなりいい感じのバランスになっているところ。大体の仕組みは振れ幅がゲームを壊すほどではないところには収まるし、でも十分な達成感を感じるくらいには劇的に効いてくる。組み方次第で全然違う挙動をするのだけど、私が思いついて触った範囲では明らかにおかしいでしょこれってなることはほぼ無かったです。これは強すぎるでしょみたいなところも必ず弱点はあるし、何に使うんだろうと思っていたものにもいつかは役に立つところがある。これをクラスと装備と作戦とetcetcな要素の倍々の組み合わせの中で成立させているの、どういう魔法を使ったのか謎過ぎます。

ぶっちゃけ好きに移動して順番は選べるけどレベルの問題でほぼ行動範囲は決まるフィールドをオープンワールドと売りにするよりも、こっちの方がよっぽど開かれた世界だと思うんですよ(セールスポイントにするにはやってみなくちゃ分からない部分すぎるのですが)。そしてそれが常に良い感じで破綻しないヤバさ。「十三機兵防衛圏」の時系列の時も同じことを思ったのですが、ヴァニラウェアの職人技というか、執念すら感じる何かでした。

 

気が付いたら好きになっているキャラクターたち

システムの話ばかりをしましたが、このゲーム、ストーリーは先述の通りゼノイラ帝国の支配から大陸を救い出していく超王道の英雄譚になります。面白いですがびっくりするようなことがある訳ではなく、キャラクターも数が多くてイベントでもそこまで深堀りがある訳ではないです。なので、そこまで語ることはないと思っていたのですが、なんかこう、そんなキャラクターたちに愛着が湧いてくるんですよね、遊んでいるとじわじわと。

それを実感したのはエンディングでした。このゲーム、各キャラごとにちゃんと後日譚がつくんですよ、その後どういう人生を送ったかの。私が後日談大好き人間(せっかく何か成し遂げたらそれによって良くなった世界が見たいじゃないですか)なのもあるのですが、それを読んでいたら、我らが解放軍の仲間たちどうだ凄いだろ、自慢の仲間たちだからなという気持ちが膨らんできて、あれ思ったよりこのキャラクターたちに思い入れあるなと。

正直今クリアした時点では大量に用意された親愛度会話もろくに読めていないし、イベント自体で語られるのもほんの断片的な話だけです。途中までキャラが多すぎて名前も覚えきれないと思っていたくらいには。でもどこでこんなに愛着が生まれたのだろうと思うに、これもやっぱりシステム面での要素が大きいのかなと。

まず、編成画面でキャラクターのことを考えてる時間が滅茶苦茶長い。とにかく誰と誰を組合わせて、どういう行動をとってもらってと考えているので、やればやるほど思い入れが生まれてくるのです。あいつは何が得意で、この時こうしたのが強かったとか、弱点もあるけど玉に瑕だよねとか。そして戦闘がオートであること。自分で操作をするのではないから、主人公のアレインも含めて解放軍で一緒に戦う仲間たちみたいな感覚が醸成されてきて、それが各々が各々の道を歩みだしたことを知れる後日譚を読んだことで爆発したんじゃないかと思いました。

 

ちなみに、一番好きなキャラクターはメリザンドです。これはもう出会いのイベントからいい性格していて最高だった。そして長らくソードマスターの活かし方が分からず困っていたのですが、最後の最後にガレリウス戦でまさかの大活躍(メテオスラッシュによるバリア剥がし)をして、流石アレインの嫁! やはり正解はメリザンド!! ってなりました。ほら、他国とは結構いい感じの関係を築いてるし、ここは国内大貴族との婚姻で地盤固めが必要ですし……。


ちなみにですがこのガレニウス戦、今までの部隊編成じゃ歯が立たないうえに戦闘ごとに150くらい回復するせいでいかんともしがたくなったのですが、あれやこれや編成をいじっているうちにほぼワンパンで倒せる組み合わせが見つかったのが、最高にこのゲームの美味しいところって感じで、ラスボス(正確には違う)戦として圧倒的に正しいと思いました。

嫁がバリアを剥がして物理防御低下とガード不可を載せてアーマリアが殴るパーティ

 

余談ですが、他に編成で最高に気持ち良かったのは、闘技場アーマリアの攻撃をフェザーボウのシャイニングで完封した時。完璧にハマった瞬間ベスト1。

初撃とHP50%以下で使ってくる攻撃をそれぞれ暗闇で回避する編成

 

最終局面での編成と感想

最後はせっかくなのでコルニアの最終局面での編成を。振り返ると最終的にはストーリーに引っ張られたり雑さと妥協が見え隠れしたりで、恐らく突き詰めればこれ以上に効率の良い編成はいくらでもありますが、まあそれはそれ。

 

アレインは攻防全てで雑に強かったのでかなり適当な編成。エルトリンデを回復に専念させれば大概どうにかなる。グリフォンルーラーは序盤から終盤までずっと火力が有能すぎて唯一使っていた傭兵です。敵に弓兵が混ざっていると落ちるし、アシスト射撃でも落ちるのはご愛敬。

 

セレストが結構後半で仲間になって可愛いから使いたいと思ったものの、余り人員では上手く編成が組めずに最終的にこうなったというやつ。グリフォンルーラーは前にいても後ろにいても落ちる時は落ちるしなという割り切り。火力はセレストと後ろの砂漠コンビがどうにかしてくれます。

 

遠隔攻撃さえなければ無類の強さだった主力魔法部隊。ヤーナでテレポートしてきて拠点をつぶすのがお仕事。フォーカサイトを載せて手数で勝負という感じでした。オーシュ君はたぶんこのゲームで一番可愛い。前衛はベレンガリアが強くて5人目解放した時どうしようかと思ったけど、ここは弟でしょとトラヴィスを暗闇付与係にして安定感アップ。ベレンガリアとトラヴィスはこの叙事詩タッチな物語で何か妙に二人の世界というか湿っぽい姉弟でした。
あと、スカーレットさんは教皇にならないといかんからねと思っていたら、後日譚でサナティオに教皇の座を任せてパレヴィア島の一司祭になっており、フローラ選んだ時のビアンカじゃん! と叫びました。ごめんて。

 

こちらは主力騎馬部隊。後半に入るとグレートナイトが前衛に置くと結構やられるので、もういっそ後ろに並べればいいのではと思って編成したもの。回復役で前衛におけるのが他におらずセイントナイトですが、モニカとクライヴが並んでよい感じ。
正直これを組んだせいで全体の戦力バランスが崩れた時期がありましたが、ナイト3枚並べてキャバリエ―ル多重掛けの圧倒的火力にあらがえざる魅力がありました。アデルに魔法槍を付けて、横一列の魔法攻撃で重装兵を落とせるのが隠し味。そのおかげでどんな相手でも雑に出して雑に強く、足も速いので切り込み隊長として申し分のない部隊でした。

 

バストリアスのイベントを最後まで見たらユニット開放して組みたくなっちゃった獣人部隊。4人編成の時は安定しなかったのですが、5人になってベルトランを置いたら安定しました。モラードに必中つけてグランドスラムするのがメイン火力と思っていたけどなかなかうまくいかず。スノーレンジャーはシンプルに強かったです。
バストリアスのイベント、獅子王がモラードをバストリアスブルーで獅子獣人にして、ユニフィは実は……というの、身代わりにした意味合いがあったんじゃないかと思うものの、そこはおそらく分かってても飲み込んで家族になるのが良かった。

 

ドラケンガルドで各部隊編成から抜けて仇敵憎しで猪突猛進した薔薇騎士団の皆さまです。お前そんなことある? ってなった。そんなに言うなら薔薇騎士団にしといてやるよって思ったのですが、意外とバランスよく何でもできる部隊でした。前二人が耐えて後ろで攻撃するバランスも良く、キトラが列攻撃覚えてから特に強い。ヴァージニアは反撃スキルが強いまさしく脳筋プリンセス。5人目はリアと迷ったけど万能バッファーのギルベルトで更に安定。今後もコルニアとドラケンガルドの友好のため、末永くお幸せに。

 

どう使えばよいのかよくわからなかったオクリーヌが回避盾なんだなと気が付いてからちょいちょい使っていた部隊。命中率高いメンバーで組んだものの絶対火力が足りずなんとも帯に短したすきに長しな感じでしたが、飛行ユニットなのを生かしてあっちこっちでギミックを動かしたりと雑用をこなしてくれました。戦闘後にクロエでパーティーエイドをかけて、リナゴラスのシェアヒールで必ず全回復するので継戦能力は高かった。

 

最初はジョセフが引率していたものの、後半になるとすぐに落ちるようになったので紆余曲折してたどり着いた主力弓矢部隊。回避が高い奴が出てきたら出します。シールドシューターは前衛に立てて回復もできて火力もあるのでなかなかズルいと思います。あとフェザーボウはアルビオンの敵で出てきて死ぬほど腹の立ったシャインニング(攻撃直前に暗闇付与)が味方になってもあほみたいに強かったので許した。これでずいぶん安定しました。アーマリアは強いんだけど行動の遅さをカバーしないと全部受けてから反撃になるので難しいところ。ロルフのブレイブスキルのアローレインは与ダメが高く中盤から終盤まで困った時に良くお世話になりました。実はマップ攻撃が結構強いこのゲーム、逆にアローレインやドラグーンダイブを使われたときに壊滅しかかることが何度かありましたが。

 

長らく余りもの部隊だったのですが、近隣住民にお菓子を作って配ろうとしてたお茶目な城主様(ジェローム)が仲間になってバランスが取れた結果主力級に。火力面は当たればデカいランツクネヒトで回避が高くない敵ならかなり汎用的にがんばってくれました。ワーウルフはこの編成では輝かないものの他に入れるキャラがいなかった。なるべくネームドキャラで闘おうとは思っていたので。

2023年の振り返り(本・マンガ)

今年読んで良かった小説10冊を。

 

マンガを5作品。

2023年の振り返り(音楽・ライブ)

Spotifyを使ってるのでプレイリスト機能で。

open.spotify.com

 

アルバムだとRAISE A SUILENの「REVELATION」がキャラクターをイメージしたミニアルバムですが、楽曲的にはキャラソンっぽいところからは更に遠ざかって色々なチャレンジがあって面白かったです。そしてこれを引っ提げての11月のライブが素晴らしかった。爆上げ楽しいなRASのライブに、この時は3階席最前でおとなしく見ざるを得なかったのですが、いやなんというかカッコいいバンドだなと改めて感じました。

 

そしてFictionJunctionの「Parade」が良かったです。表題曲の「Parade」、ここまで歩んできた道があるからこその味があって素晴らしい曲だなと。そして武道館のKajiFes、本当に梶浦由記の音楽が好きでずっと追いかけてきて良かったと思えるライブでした。万感の思いというのはこういうことをいうのかと。

 

緑黄色社会の「pink blue」が変化球ながらリョクシャカらしい王道のポップさも感じられて良かったです。横アリのライブで初めて生で見たのですが、本当に滅茶苦茶良かったし、もっと広い会場が映えるアーティストだと思いました。スタジアムとか絶対似合う。メロディの美しい王道のポップミュージックを真正面から勝負できる、稀有なバンドです。

 

ライブだとワルキューレのファイナルライブも凄かった。ここまでキャラクターとしてこの難しい曲を歌ってハモって踊れるユニットは出てこないんじゃないかと思います。

2023年の振り返り

ブログを書くこともほとんどなくなったここ一年でしたが、一年の締めくくりくらいは少し振り返りをしようかなと。

 

今年はライブの声出しがOKになったことが一番大きな出来事だったと思います。ここ数年声出しNGのライブが当たり前になっていて、それはそれで楽しいと思ってはいたものの、やはり歓声があるって全然違うなと感じた一年でした。

私が最初に参加した声出しOKは2/4のバンドリRAISE A SUILEN×Poppin’Partyだったのですが、会場の雰囲気に最初は呆気にとられ、数曲目の「Moonlight Walk」のシンガロングでじわじわと感慨がわいてきたのをよく覚えています。ああ、帰ってきたんだなという気がした瞬間でした。

それからアイマスの合同ライブMOIW2023の一夜の夢のような盛り上がりがあり、歓声の戻ったアニサマANIMAX MUSIXがあり、中でも一番歓声のパワーを感じたのはアイマス×ラブライブの異次元フェス。私は2日目を見に行ったのですでに会場出来上がっていたこともあり、時に曲が聞こえなくなるほどの地鳴りのような大歓声とあの特別な祝祭の空気感はちょっと得も言われぬものがありました。

流石にコロナ前のように年に60も70も行く生活には戻らないと思いますが、やっぱりライブの空間は私の趣味の中心にあるものだと思う一年でした。

 

あと、今年と言えばやはりクソデカ絵馬こと、Sound Horizonのの「絵馬に願ひを! Full Edition」は外せないところ。

ルート選択に攻略要素がある音楽作品という類を見ない形態で、現代日本っぽい世界を舞台に怒涛のような情報量を何度も何度もたどることで少しずつ全体像が浮かび上がり、かつ正解の提示はなくローランの解釈に委ねられる(解釈すること自体が選択肢として作品に取り込まれている)。そう言ってみれば今までのサンホラの延長線上にあるものですが、よく思い切ったなというくらい間口は狭く、噛めば噛むほど味がする過去一の怪作だったと思います。本当に何度見ても新発見がある。媒体は違いますが、十三機兵防衛圏に触れた時と近い印象のある作品でした。

惜しむらくは発売延期によりコンサートが完全初見でのルート選択となったこと。それはそれの驚きや楽しさもありましたが、分かっている今だからこそ細部をガン見したいという気持ちはあり、当然この作り方では映像化が難しかったというのも分かるのですが、もう一回見せてくれという気持ちは今でもあります。というか「秋季例大祭」が生で聞きたいんだ……来年こそ領拡みたいなライブやりませんかね……?

 

それから今年の私の中心にあったのはアイドルマスターシンデレラガールズU149のアニメ化。原案マンガにハマって幾年月、結城晴の声が聞こえるようになり。的場梨沙声の声が聞こえるようになり、ついにここまで来たという感動がありました。

アニメとしては、原案マンガのエッセンスを抽出しながら、キャラクターの掘り下げに特化した構成で大変出来が良く満足。いや本当は廾之先生の描くU149こそ至高と思っていて、テイストの差異がある(もう少しデレのパブリックイメージやデレアニによってる感じがある)ことを消化するのに時間がかかったりもしたのですが、でも桃華回~梨沙回~晴回の辺りは制作陣のこだわりが見える神ががかったものがあって、これを認めないわけにはいかないだろうと。子供アイドルが主役ということでハナから広く受け入れられることはないのを前提に、キャラクターの魅力を深く掘り下げることに注力する選択が感じられて、サイゲの覚悟と執念の一作という印象もあります。マイナーが故に熱量が上がったケースというか。あと子供たちへの目線というか、扱い方がU149なら絶対にそういうことはしないというラインをきっちり守ってくれたので良かったです。

なかなかこのテーマで2期というのは(デレであれば他にやることがあるだろうという意味で)難しいのかと思いますが、それでも第3芸能課は13人であるので、13人であるので……! ずっと待っています。キャストがどの場にU149として出る時も、ずっとフルメンバーは「13人」と言い続けている言霊を信じたい。

 

そして年末にかけてアニメと共に想定外のところから刺さったのがティアムーン帝国物語。ギロチンにかけられた皇女様のタイムリープやり直しものなのですが。やることなすこと周りがうまい具合に解釈してくれることと、ポンコツでちょっとゲスなミーア姫の内心のギャップにナレーション(小説は地の分)で突っ込みが入るところが面白く、コミカライズ発のミーアの変顔百面相と併せて楽しい作品です。基本コメディなのですが、一匙のシリアスの塩梅が非常に上手く、いい作品だと思います。

色々好きなところはあるのですが、やっぱりこの作品はミーア姫の魅力に尽きるのだと思います。無知と貴族としての常識=傲慢がギロチンに繋がった前の時間軸から何が変わったと言えば、何が民衆の怒りを招くのか、飢饉の恐ろしさを知ったことや、帝国再建に駆け回り最後は地下牢に送られた経験なのですが、基本的に地の部分は変わっていないのですよ。確かにポンコツで下衆なんですが、善性が如何に貴ばれるべきであるものかを体現しているところがあり、小心者ながら図太さ強かさもあり、前向きに学び考え行動することができる。傲慢さゆえに人を遠ざけた前の時間軸から、ボタンの掛け違えが正されるように人と結んだ縁が己のもとに帰ってくる因果応報は、もちろん周りの眼鏡が曇っているところもあるのですが、本人の人徳だと思うところも多く。

アニメで気になり、コミカライズにハマり、今ついに原作を8巻まで読み進めているのですが、内心を知っていてもこれはもう帝国の叡智なのでは……? ミーア様に全力をもってお仕えし、ミーア様に恥じないように勤めなければいけないのでは? くらいの気持ちまで来ており、この読者の眼鏡を曇らせるパワーが、そのままこの作品の魅力なのだと思います。いや、生誕祭での立ち振る舞いから月光会~パン・ケーキ宣言のところの流れ見ました? あれこそわれらが女帝であり叡智でしょう??

 

そんなところの2023年。私生活的には家を買ったり、仕事がヤバすぎたりと色々あってブログの更新はまだしばらく遠ざかりそうですが、来年も素晴らしきコンテンツとの出会いがあれば良いと願って。

【ゲーム感想】ゼノブレイド3 新たなる未来

思ったより早く来てびっくりしたゼノブレイド3の追加ストーリー。舞台は本編より前の時代、シティの6氏族の始祖たちの物語。

追加コンテンツとしては単体として見ても、シリーズをやってきて良かったと思える要素満載で、システム的にも総決算と言える完成度で大変に素晴らしかったです。ただ、このストーリーを受けてあの本編のエンディングなのはやっぱり納得が……。

 

以下ネタバレありの感想。

 

 

 

 

 

 

という訳でシリーズオールキャストでお送りするこれまでゼノブレイドをやってきた人へのご褒美のような作品。1と2の世界が衝突してアイオニオンが生まれたところから3の時代にどう繋がっていったのかのミッシングリンクを描く物語で、単体でも遊べるようにできていた3では描かれなかった、シリーズの中での3の位置づけを明確にする作品でもあります。

キャラクターも土地もあの時のあれ! というものがこれでもかと登場してずっとシリーズをやってきた人はニヤニヤしてしまうのですが、何はともあれ成長したシュルクとレックスですよ。シュルクはダンバンさんの影響が、レックスにはヴァンダムさんの影響が見えるところでグッときますし、レックスがムキムキのイケおじになってるのズルくないですかね。そりゃあ嫁も三人いるわ。そして彼らの子供がオリジンから再生されアイオニオンで生きる姿と思われる、ニコルとカギロイとの関係も、あの物語の続きを見せてくれるようなファンサ―ビスという感じで良かったです。

それからいったい何してるんだと言われていたアルヴィース(ウーシア)も物語の鍵として登場。オリジンのベースとして活用されていて、シティの人々だけを未来へ運ぼうとするアルファと、これまでの世界の人々を切り捨てられないと考えたエイに別れているのですが、ロゴスは男性、プネウマは女性で、ウーシアはどっちでもないからと美少女形態で出てくるのなんなんですかねあいつ。

そして主人公である、ヴァンダム家の祖にして、ノア(N)の子供を祖父に持つマシュー。彼の真っすぐな熱さはいかにも主人公という感じで良いものでした。世界を留めおこうとするメビウスと進ませようとするノアという2軸から、シティの人々だけを未来に連れて行こうとするアルファという第3軸があることで、Nとマシューの間にもまた別の関係性が生まれているのも面白いところ。

ただ、ここでアルファのやり方を否定して置いていかれる命があっていいわけがないと言うなら、本編のエンディングでまたいつかの未来に生まれてくるからというエクスキューズをゴンドウに喋らせてシティの人々を切り捨てたのマジでおかしいと思うんですよね。アイオニオンの兵士たちはオリジナルと同一に見なされるという価値観は、この追加ストーリーでも通底していた(ニコルとカギロイの扱いから)のでまあ納得はできるのですが、シティの人たちは駄目では?? 結局最後にそうなるの、ナエルはキレて良いでしょと思うのですが。第3の価値観を過去編で提示してくるのなら、その辺りは分かった上でやっていたということだと思うので、なんだかなあと感じるところでした。

ゼノブレイドのシリーズはこれで一区切りということだと思うのですが、3の後日譚で何かこう、納得いくような未来が描かれて欲しいなという気持ちもあります。3のEDは二つの世界に別れた時もきっと出会えると言っているので、その先に何が起きるかは遊ぶ方に委ねられてるとも思うのですが、2のエンディングみたいな何が何でもハッピーにするパワーを見せてくれてもいいのよ?? という気持ち。

 

システム面はマップに新要素が加えられていて、アンテナを立てれば「?」マークが表示されるので取り漏れなく探索できるのが良い感じ。普通にやっていたら取れずに最終的に残ったコンテナや遺物の回収が、上のエリアからどうやって落ちてくるかのバリエーションになってしまうのはどうかなと思うところもありつつ、マップの上下を使った仕掛けは含めゼノブレイドの伝統ではあるかなと。

あと、相変わらず音楽が素晴らしかったです。サントラのトリロジーボックス、買わせていただきます。

 

そんな感じで色々と言いたいことが残ったところはあれど、RPGはもう面倒くさいかなと思ってた私が気付けば100時間以上遊んでしまうような滅茶苦茶楽しいゲームだったことは間違いなく、去年から一気にDE→2→3とやってきて良かったなと思います。これだけのゲームを作れるのだから、モノリスソフトの次回作にも期待大です。

ところでゼノギアス、リメイクしませんか……?

【小説感想】化石少女と七つの冒険 / 麻耶雄嵩

読み終えた瞬間にやりやがったな!! と叫びたくなるところが麻耶作品の醍醐味ですよね。

正直「化石少女」が何とも言えない感じだったのであまり期待をしていなかった続編だったのですが、あれを下敷きにしてこれを構築されたらもう脱帽です。常識と倫理観は遥か彼方に置き去りに、悪意と死体をエンジンに突き進む学園三角関係ラブストーリー(大嘘)。最低に最高にぶっ壊れた読み心地とトリッキーだけどしっかりしたミステリの組み合わせがまさしくな一冊でした。好き。

名門学園を舞台に、古生物部の暴走気味の部長まりあとそれをたしなめる彰を主人公にした連作ミステリで、学園で毎度のように巻き起こる殺人事件に廃部阻止の実績作りのため首をつっこんで探偵をしたがるまりあに振り回されながら止める彰という構図。ただ、実はまりあの推理は……ということで彰は消火作業に気苦労が絶えないという、まあ要するにキャラ配置的にはハルヒなのですが、前巻のラストであんなことがあったからいったいどうするのかと思えば、普通に続いてる時点でまずびっくりだよという。

そして今作の見どころはその構図そのもの。新しい事件、新しい部員、そしてまりあに起きる変化。外的要因の積み重ねがいったい何を引き起こすのか、美しく組みあがる最悪に喜べるかどうかが、いつものことながら麻耶作品を楽しめるかどうかのラインだと思います。はい、私は大好きです。

それから、前作はまりあのキャラクターに割とこうラノベ外の人がラノベっぽいキャラを書いた時にありがちな違和感があったのですが、そこが大分こなれていて読みやすかった感じもありました。何しろまりあが一番まともなキャラだから、彼女が魅力的に読めるのはせめてもの救いではあるので……。

 

 

 

以下ネタバレあり。

 

 

 

 

まりあの暴走を止めるお付きの人ポジションだった、そしてそれに内心満足していた彰の歯車が狂っていきぶっ壊れるまでの過程を描いた連作ミステリ。彰は前作で罪までを犯したが故に、彼女に探偵の才能があることを自覚させない(=彰の罪に気付かせない)ため、真実に近づく彼女の推理を否定するという特殊なミステリをやっているのですが、スタートからしてひどいその状況がものの見事に破綻していくのが最低のドライブ感がありました。

「彰と同じ、自らが犯した殺人をまりあに明かされる訳にいかない境遇の新入部員」「まりあが彰と関係なく自分自身で勝ち取った大きな成功」「それ故に古生物部の外に求めた関係の殺人事件による破綻」「その間に生まれたまりあと新入部員の親密な関係性」と一つずつピースを集めるかのように、「彰の心地よいポジション」を崩す条件がそろっての最終章。誰が主体かの叙述のトリックが、彼のいたポジションが完全に乗っ取られたことをこれ以上なく鮮やかに示した次の瞬間、提示されるのは最悪の構図が生まれたという事実。全てはこの絵を描くために逆算で構築されていたのかと思うと、悪趣味というかなんというかやりやがったな!! という気持ちにしかならない結末でした。

ここから更に話を続けるのは難しそうな気もしますが、拗れに拗れたこの関係がさらに最悪なツイストを見せるような続編に期待してしまう気持ち、正直あります。

【小説感想】走馬灯のセトリは考えておいて / 柴田勝家

突飛なアイデア文化人類学的なアプローチで迫るSF短編集。

表題作の「走馬灯のセトリは考えておいて」が凄かったです。人々がライフログを残し、それを基に受け答えまで可能な故人のライフキャストが作られるようになった時代。ライフキャスト作成の仕事をしている主人公は、かつてバーチャルアイドルの中の人だった老人から、バーチャルアイドル黄昏キエラのライフキャスト作成、そして彼女が死んだ後のラストライブの依頼を受けて、という話。

「バーチャル」で「アイドル」で「死人」であるという虚飾に虚飾を重ねた存在に、魂の形を見出す祈りのようなセンチメンタリズムが鮮烈でした。バーチャルアイドルの中の人だった彼女がその姿に何を託していたのか、ライフキャスターである主人公の父親にまつわる秘密、全てに虚実が入り混じり、精神性の神秘は剝がされて、生死の境界さえ曖昧になりつつある世界の中で、それでもそこに祈りはあるんだなというか。故人のライフキャストが故人のライフキャストのアイドルとなる空間は、薄皮一枚で虚無の広がる恐らくは正しくないものであって、けれど私たちはそこに祈ってしまう。それは論理的には間違っていると分かっていても、信じることで見えてくる光がある。まさしく、信仰の形をした物語だったと思います。推しという信仰を持つ人に読んでもらいたい短編でした。

他の短編では「クランツマンの秘仏」が最高でした。信仰が対象に質量を生むという、はじめはある種の冗談だった説に取りつかれた東洋美術学者をめぐる異常論文。私が狂った話を大真面目に語るのが好きなのもありますが、第3者の視点である程度の客観性を持って語られるが故の迫力があったと思います。そしてこれも「信仰」が何かを生み出すというアイデアなので、表題作とテーマを同じくしているんだなと。