よつばと! 14 / あずまきよひこ

 

よつばと!(14) (電撃コミックス)

よつばと!(14) (電撃コミックス)

 

 ずいぶん久しぶりの新刊ということで若干不安もあったのですが、何も心配することなどない最高に面白いよつばと! でした。

子供の目線と発想と、見守る大人の眼差し。東京という見知らぬ街に出てきたりと大きなイベントもありつつ、一つ一つの反応に、ああいつかはそういう風に世界が見えていたような気がするなあと思いました。そしてよつばはビーズ細工を作ったりお姫様ごっこをしたりとずいぶん女児っぽい感じになったなあと思っていたら、最後のビュッフェの話でそれが回収されるのかと。

あととーちゃんの妹の小春子さん、ちょっと凄いキャラ投入してきたなって思いました。よつばとはこう、キャラ的な魅力で勝負するマンガじゃないと思っていたら、あずまきよひこが突然刀を抜いてきた感じ。しかも腕は全然鈍ってないな!? みたいな。

眼鏡にポニテで背が高めのしゅっとした感じ。いかにも真面目で几帳面で頭良さそうな感じで実際そうなのだろうけど、どこか抜けてるというかズれてる変な人っぽさに、あの母の娘なんだなという雑さや大胆さが見え隠れするのがとても良いです。最後よつばに「ここはおひめさまの感じあった」と言われて見せる笑顔がもうなんか、可愛いとか尊いとかじゃなくて、結婚してってなるのでちょっとこれはヤバい破壊力。

名探偵コナン ゼロの執行人

www.conan-movie.jp

コナンの映画はもう長らく見ていなくて、安室さんについてもそもそも私が知る時点では登場していないキャラクターだったのですが、安室の女が大量発生するでっかいムーブメントを察知したのでいそいそと映画館へ行ってきました。

見終わって色々とコナン凄いなと思ったのですが、とりあえず安室さんも格好良かったけどその愛車の白いRX-7FD3S)が大活躍してたのでテンションが。本当に好きなんですよRX-7。未だに日本車で一番格好いい車だと思ってるくらいに。しかも前期型(ランプの形が細い、後期よりカッコいい)でしょ。マツダじゃなくてアンフィニのエンブレムついてたし。安室さんのドライビングテクニックにより首都高をドリフトしたり、ちょっと物理的に無理なんじゃないかというカーアクションしたりと見せ場がたっぷりあったのですが、この大人気シリーズの映画で2018年に劇場に響き渡るロータリーサウンドとかちょっと最高じゃないですかね..。マツダは早く次のロータリースポーツ作ってくれませんかね……。

というのは置いておいて、まずシナリオがかなり込み入っていてびっくり。コナンたちの視点、安室さん(というか公安)の視点が絡み合って、更に別のところに犯人の動機と行動がある。しかも、前半は小五郎が逮捕される流れで、司法制度や公安の位置づけの解説がばしばし入ってきて子供ついてこれてるかという感じ。その分後半は話し筋とは別に超アクション満載になっていて、それでいて伏線は見事に回収し切るんだからなかなか。

そしてテーマが「正義とは何か」をど真ん中からいっているのがびっくりしました。コナンの作品世界観って犯人さえ死なせない、真実はいつもひとつの絶対正義というイメージが私の中に長らくあって、そこに対して安室さんという正義の在り方を相対化するような人物が存在するようになったというのがまず驚きだったというか。

作品構造的にコナンが発揮する絶対的な正しさは今回小五郎のおっちゃんの冤罪を晴らす方向に向かっていて、それを仕組んだ安室さんは国家という大きなものを守るためにダーティーな手段にも手を染める。犯人と対比される形で安室さんが示す一線は、自分の犯したイリーガルな手段のケツを持てるかどうかなのですが、それは決して何もしなかったことにはならないし、現にそこに端を発してこの映画の物語は始まっている訳で。

その上で、安室さんのいる場で犯人にコナンが投げつける「それは正義じゃない!」という言葉の切れ味に、ひええええってなりました。コナン/安室/犯人の対比の中で浮き上がる正義の形に対して、あれを恋人だと言い切っちゃう安室さんが何を思って何をしたかも分かるけれど、でもこっちは蘭姉ちゃんがどれだけつらい思いをして泣いていたか見てるんだっていう、そこまでを踏まえた上での観客にも投げつけられるあの台詞はちょっとヤバいなと。それでまたコナン自身が本人の絶対正義のためなら、今回も法に触れるようなこと一切のためらい無くやっちゃうというところも含めて、ねえ。

とか言うことを考えながら見終わったら、私が見ながら思っていたことはだいたい全部福山雅治が歌にしていて主題歌として流れてくるものだから二度びっくりですよ。

真実はいつもひとつ だけど正義はいつもひとつじゃない 

 って歌うのなんだこのコナンの世界観における安室透の完璧なキャラソン

 

あとは灰原さんがすっかり少年探偵団の皆のお母さんになっていて、宮野さん第二の人生楽しんでるな良かったなっていう気持ちになりました。基本的に灰原さんが最終的に幸せになってくれさえすれば私コナンに思い残すことはないので……。

現代詩人探偵 / 紅玉いづき

 

 読んでシンプルに面白い小説ではないと思います。謎を解き明かしてスッキリするようなミステリでもないですし、探偵を始めとするキャラクターの魅力だとか、そういう方面のエンタメ性が特段高い訳でもない。でも、これは切実な小説だと思うのです。

かつてSNSを介して開催された詩人たちのオフ会。10年後に再会を果たしたのは9人のうち5人で、4人はすでにこの世を去っていた。主人公は探偵として、いったんは自殺なり事故なりで処理された、その死の本当の理由を暴こうとします。それは真実を明かすことが果たして幸せかという探偵の命題と向き合うことであり、ただ、彼にとって解き明かしたいのは誰がでも、どうやってでも無い。そこまでして解き明かしたいのは、彼らの死と詩がどのように結びついていたのかだけ。だから、詩人で探偵。そうまでしても向き合わなければならない理由が、彼にあったということ。

最初から最後までこの作品の中心にあるのは詩で、でも多分、これは小説でも音楽でも絵画でも演劇でも同じものなのかなと思います。直接的に生きていくことに関わらないはずものに対して、引き寄せられ、囚われ、どこまで迫れるのかともがいて、そのために何を犠牲にできるのか、何を傷つけられるのか、みたいな。

だからこれは、読者に対して、あちら側に踏み込んだ人であるのか、こちら側でまるで真っ当であるかのような顔をしている人であるかを試すような作品になっていて、また、あちら側の業というものに手を伸ばしていくような小説だと感じました。そこにある何かはこちら側の私にはわからないけれど、そこに確かに何かがあって、その手触りを少しだけでも感じられるような、そういう。

振り切ってしまったり、何かもっともらしい結論は出すことはなく、作品としてはもやもやしたまま終わるのですが、だからこそとても真摯で、切実な小説なのだと思います。

あと、お話としては3章が好きです。明かされた2人の関係性が好きというのはあるのですが、生きていて欲しかったと言いながら、責任が、証が欲しいと言って、更に返す刀で死んじゃだめだよっていうの、こう、凄い良いなって。

GODZILLA プロジェクト・メカゴジラ / 大樹連司

 

 傑作。凄いぞこれ。

アニメゴジラ前日譚の第2段は、人類がゴジラに追い詰められ、メカゴジラという希望に縋り、そして地球脱出を余儀なくされるまでの記録。前作同様に当時の証言を重ねていくドキュメンタリー形式で、人類が追い詰められ狂っていった凄惨で壮絶な歴史を描き出します。そしてその歴史の中に、私に拾えるところだけでも膨大な過去の東宝特撮の要素をこれでもかこれでもかと配置しながら、一つの史実として成立させてるのが凄まじいです。もう年表読むだけでワクワクするやつ。アニメゴジラの前史にして、とんでもないクオリティの二次創作というか。

とにかく圧倒的なゴジラの恐ろしさと、異星人がもたらしたメカゴジラに縋り、その建造時間を稼ぐためだけのゴジラ誘導作戦にロクな武器も与えられず死んでいく人々。そしてゴジラをそこに留めるためだけにヒマラヤ山脈を崩して断層にするという途方もない作戦。荒唐無稽なフィクションの極地のような出来事も、その現場に居た人々の証言の生々しさに、いつしか人類が直面したこの惨憺たる負け戦が本当にあった歴史のような気がしてくるのがもうヤバいです。だんだん、こんな悲惨な歴史を果たして楽しんで読んで良いものかみたいな気分にすらなってくるので、だいぶキマっている感じ。

全てのリソースがメカゴジラ建造に向けられた結果、困窮していく最前線。ビルサルドがいなくなったらもう直せない超兵器という名のガラクタ。結果投入されたのはアホみたいな例のバイク型兵器。特攻だとしか思えない攻撃に、先の見えない闘いに自ら死のうとする兵士たち。欠員を埋めるため動員されるのは難民となっていた少年少女で、彼らを教育した兵士にそれでも感謝を述べて死んでいく。

それだけならげんなりするだけなのですが、語られるエピソードがまた琴線に触れるような話が多いのです。ゴジラが見かけ上活動を止めていた期間と妖星ゴラスの話も面白いですし、メカゴジラプロパガンダムービーを作ったモデルはあの人だろうと推察できる映画監督の話に、希望が失われ火の海となった羽田空港に現れる少女だけの冷凍メーサー戦車隊とか、崩される前のエベレストに向かった山男の話とか。これだけで長短編何本作れるんだろうというエピソードが次から次へ断片として語られるので、200ページにも満たない小説の濃度が大変なことになっています。

そして中でもどうしても好きになっちゃうじゃんというのが、人類を守るために闘った怪獣たちの話。メガロと同士討ちするキングシーサーがちょろっと語られただけでテンションが上がるし、「オレたちのガイガン」はもう泣くでしょあんな話……。そしてそこから、地球圏を脱出して終わりかと思っていたこの作品の最後の最後にきた大ネタ仕込みに繋がって、それがアニゴジ1作目ラストのあれにも繋がって、それで、やっぱり人類の守り神はあの怪獣! ってやられたらもう私の負けですよ。完敗。

他にも明らかに起動させたらそれはそれで大変なことになるのが目に見えているメカゴジラという存在や、オキシジェン・デストロイヤーをそういう扱いにしたのか上手いと思った矢先に現れるこれデストロイア幼体じゃないっていうあれだとか、気になることがたくさんあって、なんだかやっぱり映画を見に行かないといけない気分になりました。

あと、ここまでやってそれでもアイツが出てこいないのだから、映画3作目は当然あの怪獣が中心なんだろうな、とか。

4月のライブ/イベント感想

4/5 相坂優歌 ファーストライブ「屋上の真ん中 で君の心は青く香るまま」@ Zepp DiverCity TOKYO 


4/7・8 THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS Initial Mess@ge LV

THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 010 島村卯月

THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 010 島村卯月

 

 シンデレラガールズの台湾での海外初公演をLVで。

これまでのシンデレラガールズをダイジェストで見せていこうというコンセプトが見えるセットリストに、極限までシンプルなセットと演出。周年ライブでは逆にもうできないような、シンデレラガールズの素をぶつけるようなライブになっていたと思います。シンデレラガールズは常に変わっていくものだと思っているのですが、序盤の初期メンバーソロからの「ススメオトメ」は、もうどうしても1st舞浜アンフィが脳裏をよぎってダメでした。走馬灯か。

あと、「S(mile)ING!」。私が島村卯月大橋彩香に落ちたのはアニメの時で、それはあの時に彼女が抱えていた物語が刺さったからで、それを受けての3rd、4thのこの曲も良かったんですよ。あれも乗り越えた先の形だったから。でも今回はそこから更にずっと先に行っている島村卯月大橋彩香としての表現がそこにあって、ああ立派になった、もう大丈夫だって思ったらなんか泣けてきてですね……。「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。」的なメッセージを感じたというか。こう、あとはもう地元で畑を耕しながら、街に出て活躍していることを風の便りに聞ければいい、彼女の歩む道が幸せであれ、みたいな、そういう。いや、本当に好きで良かった……。

 

4/28 THE IDOLM@STER SideM 3rdLIVE TOUR 〜GLORIOUS ST@GE!〜 静岡1日目 LV

【Amazon.co.jp限定】 THE IDOLM@STER SideM 3rd ANNIVERSARY DISC 03 (ビジュアルシート(ジャケットサイズ) 付)
 

 彩ってあまり好みではなくて、ライブでも今まではピンと来ることのないユニットだったんですが、今回はとにかく凄かった。特に、2人だけで歌った「喝彩!~花鳥風月~」。1人足りないからと言わせないというあの気迫に満ちたパフォーマンス。スクリーンに釘付けにされるくらいに、胸にくるものがありました。

あとは「我が混沌のサバト・マリアージュ」からの「Reversed Masquerade」が素晴らしかったのと、やはり他とは仕上がり度合いが違うドラスタの「MOON NIGHTのせいにして」も良かったです。

大楽は見れていないのですが、ツアーを通じてパフォーマンス面でも立ち振舞の面でも、出演者同士の絆という面でも大きな成長が見えたのが、良いツアーだった証なんじゃないかなあと思います。

 

4/27 プリンセス・プリンシパル STAGE OF MISSION @ 舞浜アンフィシアター

プリンセス・プリンシパル STAGE OF MISSION [Blu-ray]

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 プリプリ続編は劇場版全6章! ガルパン方式! 

ということで、狭く熱烈なファンだけを見据えて続けていくからお前らついてきてお金を落としてくれよな!! という熱いメッセージを感じるイベントでした。そりゃあイベントブルーレイも発売される。お布施だわこれ。

イベントの方はOP&ED&キャラソンライブ+声優トークコーナー+朗読劇の至ってスタンダードな形。プリンセスのキャラソンとOPが聞けたのが良かったです。あとこの5人が集まると相変わらずわちゃわちゃとうるさいな! っていう(悪い意味ではなく)。

1518! イチゴーイチハチ! 5 / 相田裕

 

1518! イチゴーイチハチ! 5 (ビッグコミックス)

1518! イチゴーイチハチ! 5 (ビッグコミックス)

 

 生徒会の活動を通じて距離が近づいてきた幸と公志朗。そんな中、公志朗のクラスメイトであるナカナツが公志郎に急接近! 二人の仲はどうなっちゃうの!! みたいなあらすじが背表紙に書いてあるんですけど、本当にそういう話でした。ど王道少女漫画展開か。

野球への区切りがついた所でそうかそういう展開になっていくか、なっていくよな青春だものっていう感じなのですが、2人の初々しさが最高に素晴らしいです。お互いを意識し始めたばかりの関係みたいなものを描いてもこの作者は上手いなあと。2人ともめっちゃ良い子だし、可愛いし、微笑ましいというかなんというか。公志朗が野球の代わりだと考えたくないというのも、幸が恵まれた自分と相手の差に悩むのも、ちょっと不器用なくらい生真面目で、けれど真摯で良いなあと思いました。

ただ個人的にはナカナツめっちゃ好きですね!

賭博師は祈らない / 周藤蓮

 

賭博師は祈らない (電撃文庫)

賭博師は祈らない (電撃文庫)

 

 18世紀末のイギリスを舞台に、勝たない、負けないを信条とする賭博師のラザレスが、勝ちすぎるという失敗を帳消しにするために賭場と引き換えた少女奴隷のリーラ。喉を焼かれ意思表示の手段を奪われ、決して逆らわないように調教された彼女を、ラザルスは「どうでもよい」という口癖の通り、踏み込まず捨てもせず、コイントスの結果に従いメイドとして働かせ始めるというような導入のお話。

声も表情も、感情を表す全てを失い、ただその瞳に怯えをよぎらせる奴隷の少女と、孤児から賭博師に拾われて仕込まれた、その道で生きていくには純粋すぎるばかりに心を殺す青年。世相の厳しさと賭博師という刹那的な生き方を背景に、少しずつ、お互いに生まれていく人間らしい感情が非常に良いです。それは信頼だったり、愛情だったり、2人にとってはずっと遠かったもので、だからこそ特別になり得た。そして、何も抱えないことを自分に課していた青年が、奪われた少女を取り戻すために、考えもしないはずだった無茶な勝負に踏み出すのだから、それはもう控えめに言って最高でしょう。

そしてまあリーラが可愛いんですよ。褐色銀髪で木版に単語を並べてどうにか意思疎通が取れる元奴隷の少女。主人であるラザルスにめちゃくちゃ懐いている感じがなんというか、捕まって怯えていた野生動物が飼い主にめっちゃ懐いたみたいな趣があって好きです。ラザルスはラザルスで心を閉ざした野生動物みたいな感じなので、2人の関係の変化が、こう、人から遠ざかっていたものが人になっていくような話が趣味なのでとてもツボでした。あと、この時代を生きるにはあまりにも真っ直ぐすぎて、その真っ直ぐさ故に時代を変えていく拳闘士のジョンが本当にいいキャラクターだと思います。

ラザルスにとってリーラを取り戻す闘いの手段であるギャンブルの部分が、ヴァンテアン(ブラックジャックの原型)のカウンティングから最終的にはちょっと異能バトルみたいになるのでどうなのかと思いつつ、この作品は2人の関係と時代の持つ空気感みたいなものを楽しみに読むものなのかなと思いました。良かったです。続きも読みます。