5月のライブ/イベント感想

4/4 THE IDOLM@STER MR ST@GE!! MUSIC♪GROOVE☆ @ DMM VR THEATER

idolmaster.jp

日替わり主演アイドルは真。DMMシアターは透過スクリーンなんですけど、奥行き感があって本当にステージ上にいるような感じ。映像+録音よりも、生の声を当てたり、リアルのダンサーさんと一緒に踊ったほうが本当にそこにいるように感じられるのが人間の感覚って面白いなと思いました。そして一番やばいのは曲よりもリアルタイムで観客にキャラクターが反応を返してくるMC。前にいた真Pが指名されて泣き崩れた。

通常のアイマスライブは半々より重めに中の人コンテンツなので、このキャラクター純度100%のあり方は面白いなあと思います。今回は担当では無かったから興味深いなあと思ったけど、推しでやられたら私も崩れ落ちるかもしれない。

 

5/5 岸田教団&THE明星ロケッツ presents “ガチです(ФωФ)!” @ ディファ有明

ストレイ

ストレイ

 

 ディファでセンターステージでガチですって絶対岸田さんがノア好きだったからでしょって思ったけど、まさか入場したらリングがあるとは思わなかったし、2階に横断幕かかってて芸が細かくて笑いました。

まあそんなノリで、はやぴ~さんがサホーレバーフバリで入場してきた時点でもうダメだったんですけど、茶番含めて最高に楽しいイベントでした。岸田教団+西沢幸奏とか、岸田教団+Geroとか、そんなのゴリゴリのステージになるに決まってるし、リングからガンガン煽られたらそれはもう楽しい以外にないじゃないですか。本当に楽しいイベントで、是非次回もやってほしいです。ディファは閉館しちゃうので、じゃあいっそ次は後楽園ホールかな……。

 

5/12 BanG Dream! 5th☆LIVE Day1:Poppin’Party HAPPY PARTY 2018! @幕張メッセ展示場

CiRCLING

CiRCLING

 

 なんかもうすっかりバンドだなあと毎度謎の感慨に包まれたポピパ。大体見るたびに少しずつうまくなるので追いかけている感があって良いです。ただ、もう少しフルバンドの曲がね、聞きたいんですよ。へごが前に出てきて歌うのもそれは求められてるのだろうし、声優コンテンツとしての正しい在り方が今の路線なのも分かってはいて、それはもちろん楽しいのですが、もっとがっつりバンドとしてライブをするところも見たいんです、と思ってしまうのも毎度なのでなんとも。

ついに初披露された「夏のドーン」は最高に楽しかったし、「CiRCLING」も大団円感半端なかったし、なにより「Light Delight」があまりにエモくて震えました。あの照明の中で、あの曲を、ああいうふうに演奏できるのか……っていうのも。

 

5/13 BanG Dream! 5th☆LIVE Day2:Roselia -Ewigkeit- @幕張メッセ展示場

Anfang

Anfang

 

 これはもうほんとべらぼうに凄かった。

 

5/19 LAWSON presents TrySail Second Live Tour “The Travels of TrySail” @幕張メッセイベントホール

TAILWIND

TAILWIND

 

 若さ、明るさ、勢いというか、すごい陽のパワーを感じるライブでした。めっちゃ上がって、みんなで元気になる! みたいな。歌って踊って可愛くて、アイドルとしても正しくて、そりゃあもう人気もでるだろうと。あとTrySailのもちょはMCめっちゃしっかりしてるな!! そして天ちゃんはめっちゃクソガキみたいな動きしてた。

楽しかったんですが、しかしあまりにも真っ当で眩くて、もう少し闇が滲んでないと私には眩しすぎてですね……というのもあったりも。


5/20 あどりぶグランプリ2017 @ 中野サンプラザ

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いつも通りのあどりぶで心が落ち着きます。あとゆっこさんがいつも通りやばい。

へごはステージ上で火傷をすることにも何をするにも、吹っ切れたかのように恥ずかしがったり躊躇う様子がなくなってて、あどりぶだからの安心感なのか、ちょっと何か変化があったのかなあとか。

 

5/27 大橋彩香 Special Live 2018 ~ PROGRESS ~ 5/27 @ パシフィコ横浜

PROGRESS (初回限定盤) (特典なし)

PROGRESS (初回限定盤) (特典なし)

 

 大橋彩香のファンになったことは正解だったと胸を張って言えるライブでした。

大橋彩香 Special Live 2018 ~ PROGRESS ~ 5/27 @ パシフィコ横浜

 

PROGRESS (初回限定盤) (特典なし)

PROGRESS (初回限定盤) (特典なし)

 

1stライブから2ndへの進化もまあ大概にびっくりした訳ですが、その線上よりも、アルバムの出来が良かったこととファンの贔屓目で高めに見積もっていたものより更に上空を撃ち抜かれたのでちょっと唖然としました。本当に。

大橋彩香初めてのホールライブは、これでもかというくらい様々な演出とチャレンジと、そしてそれを支える歌やステージングの積み上げが半端ない、まさに進化のライブでした。いきなりドラムソロから始まって、バラードからカッコいい曲に可愛い曲、アッパーな曲まで歌って、ダンス曲ではダンサーのやるようなダンスに挑戦して。

理想に向かってやりたいことはもう全部突っ込むし挑戦するという気概を、不安で仕方ないから石橋を叩くと本人が語る性分が邪魔するんじゃなくて、一定のクオリティまで全部を引き上げるんだという方向に働いているの、ちょっと凄いです。やたらストイックに体を鍛えたり、色々なアーティストのライブBDばかり見ていますと語っていたの、そりゃあこれを実現するためには必要だったろうけれど、様々なコンテンツのライブに参加して、もちろん声優としての活動もありながらこれって、いや本当に、凄いとしか。

あと、2ndライブで見えた演じるように歌うという部分が完全に歌としての表現に昇華された結果、声量があって踊ってもぶれないくらい安定した歌に表現力が加わってえらいことになっていました。「バカだなあ」からの「Sentimen-Truth」の感情の入りっぷり、アコースティックで激しい曲を演るという「勇気のツバサ」で感じる声の力。それから、私はこの人の声の伸びが凄く好きなんですけど、高音のロングトーンがほんとすごいなと。あとあと、ステージでの立ち居振る舞いも、すっかり堂々としたものになって、「ステージで歌が上手い子が歌っている感じ」から、「ステージから会場を掌握している」くらいまで進化していたので、本当に、何を見せられているんだろうかと。ファンだから応援するだとか成長を見届けるだとか、そういう段階から、ショーとして形を為したひとつ上のレベルに手がかかっている感じがあって、お前ちょっと嘘だろそれはもう数年後の話だろって。

それでいながら、まだまだ伸びしろがあるというか、足りないものがあるんだっていうのを、やっている方も見ている方も感じるようなライブだったと思います。異様に高い理想が目指すべきライブとして明確にセットされて、まだそこに向かいはじめたばかりというか。だから、現時点で凄い物を見せられても、これはあと5年、10年したら、もしかしたらとんでもないものが見れるのじゃないか、本当に上まで行けちゃうんじゃないかとワクワクするような、そんなライブでした。

 

そしてその「理想」だとか「進化」というものは 2ndアルバムからライブまでを貫いたテーマなのですが、「進化した」じゃなくて「進化途上」なんだなと思います。

だから、2ndアルバムを聞いた時は、まだ見ぬ未来に向かおうと歌う「シンガロン進化論」で始まって、届かない理想との乖離とそこへ向けて歩き続ける覚悟を歌う「Sentimen-Truth」で終わっていたのだろうと思っていたのです。なのでライブもてっきりそういう構成なんだと思っていたのですが、「Sentimen-Truth」が前半に持ってこられたことでこれはヤバいと。

だってあんなに進化と進化と言い続けた上であの曲がここに来るのなら、そこから先は歩き初めた第一歩目で、まさに「進化してきた今まで」と「まだ届かぬ理想に向けて進化するこれから」の境界線がライブのど真ん中に置かれた訳で、いやそれはもう、ねえ。

その上で、ライブ最終盤、最大の盛り上がり曲である「ワガママ MIRROR HEART」の後に、以前より格段にレベルが上った「ABSOLUTE YELL」「流星タンバリン」と続いていくのは、これが大橋彩香なんだと改めて宣言されるみたいで。

歌うことで精一杯に見えた1stライブの最後に憑き物が落ちたみたいに楽しそうに歌っていた「流星タンバリン」と、もう一曲歌いたいとワガママを言った「ABSOLUTE YELL」から、ステージを楽しんでいる空気が伝わってきた2ndライブを経て、確かにここに繋がってきた線が見えるんですよね。多幸感のライブ。これが大橋彩香の表現したいライブ。それはちょっと追いかけてきた身としては泣くよね、本当に。

そして最後に「シンガロン進化論」で一緒にもっと進化していこうって歌われるセットリスト、ちょっとヤバいですね。軽く死にますよね……。

 

様々なことに挑戦してこれからも進化していく姿を見せる一方で、これが揺るがない芯だというものを提示しながら、今時点で受ける衝撃の大きさと、想像を超えて高い理想と、もしかしたらそこに届くのかもしれないという期待感をいっぺんに抱かせる、そんなライブだったと思います。いや、ほんと、うちの推し半端なかったんだって。

武道館 / 朝井リョウ

 

武道館 (文春文庫)

武道館 (文春文庫)

 

今、アイドルって言われると何を思い出すだろうと考えてみると、10代の女の子たちが数人でグループになって、歌って、踊って、ライブをしたり、CD封入券で握手会をしたり。更にはバラエティに出たり、俳優に挑戦したり、太っただ何だで叩かれたり、ネットでプチ炎上したり、恋愛でフライデーされたり、卒業したり、解散したり。

アイドルってそういうものだし、そうなんだろうというイメージがあって、この作品はそういうまさに今のアイドルを扱ったものです。NEXT YOUというグループのメンバーを中心にしながら、ネットでの炎上とか、TOの居る現場の様子とかまで含めてそのままに描くような、もう全部入りっていう感じの。でも、アイドルってこういうものだよねという、決まった枠で理解したつもりになって納得して終わり、という訳では無いのが、この小説の凄いところかなと思います。

「アイドル」というイメージというか、今の時代に皆がそう思っているフレームがあって、その中に女の子たちが居て、それを推すファンたちが居る、ちょっとでもズレたらもうお互いに興味すら無くすような構造の中で、重なったその刹那にアイドルって呼ばれるものが浮かび上がるような。それは強固な概念のようで、決してそうじゃない。だってその中にいるのは人間で、10代の大きく変わっていく時間を駆け抜けたる少女たちな訳で。

これは、そこで何かを言われ、誰かに見られ、何かを夢見て、何かを選んでいった、その全てを、一人一人が何を考え、感じて、どう進んでいったのかをそのまま描こうとした作品なのだと思いました。リーダビリティの高さと、心理描写の上手さから本当に生っぽくて、でもわざとらしくない線で、「アイドル」としての当たり前ではなくて、移ろい変わっていく人としての当たり前を重ねていった時に、そこにアイドルという枠組みがあったら、どうなるのか、みたいな。だからもう、読み終えて「せやな」としか言いようがないというか。

彼女たち一人一人が選んでいったものに、何が正しいとか正しくないとか、そういうことを言うのではなく、ただそうあるものとして描く。今ある枠組みすら、変わっていくものの一つでしかないから。そしてその選択だけが、正しかったことにできる未来へと繋がっていくから。

それと同時に、読者はそこにいくらでも物語を見出すことができるし、怒ることもできるし、それでいいって思うこともできる。誰の選択こそが正しいんだと言うこともできるし、それは欺瞞だと誰かを断罪することだって、やろうと思えばできる。なんだかこれは、読者がアイドルに求めているものを映し出す鏡なのかなと思います。あるがままを、材料のまま提示された時に、あなたはどう感じますか? と問われているみたいな。

そう思うと、つんく♂があとがきで、ファンにとってのアイドルを「自分の代弁者。なれなかった自分の成り代わり」と言っているのが重いなあと。

86 ―エイティシックス― Ep.4 アンダー・プレッシャー / 安里アサト

 

 相変わらず面白いです。何をしてても読んでるだけで面白い辺りに、世界観もキャラクターも出来上がってる、シリーズものとしての貫禄みたいなものすら既に感じる。

レーナとシンが出会い、彼女と彼の物語としてはこの上なく美しいハッピーエンドを迎えたからといって、レギオンとの戦争が終わった訳ではなく。大きすぎる犠牲を払いながら、共和国の奪還という目標に向けて、レーナたちの闘いは休む間もなく続いていく。その戦況は相変わらず人類にとって絶望的で、闘えど闘えど先が見えずすり減らされていくようで。

一方で助けられたはずの共和国に色濃く残る有色人種への差別感情と選民意識。連邦からの悲劇の子どもたちというレッテル。身勝手に一方的に求められる贖罪。そしてそれと対比されるように描かれるのはエイティシックスたちの、人間に対する不信頼という裏側からの断絶。そして、祖国も人の優しさも捨てていく彼らと対比されるのは、人の脳構造を記憶だけ切り落として使用し始めたレギオンという戦闘機械の存在。

いくつもの対比構造を作りながらこの作品が描こうとしているのは、人間が人間足り得るためにあるものは何かということと、愚かさを抱えたそれを肯定し得るのかということなのだと思います。レーナだけが信頼されるのでは足りないから、人間の共和国の一員だという意識のあるレーナと、人を信じないエイティシックスの間は、埋まったようで埋まっていない。それが明確にされて、どこまでも続く絶望的な闘いの中で、この先の物語はそれを探す道のりとなるのだろうなと思いました。

それは置いておいて、序盤のいちゃいちゃっぷりが何というかこう! お前ら! お前らさあ! みたいな感じがして非常によろしかったです。あの感じから、後半の地下道での闘いまでの緩急の効き方は凄いなあと。ここでこれ! そう!! 好き!!! みたいな展開を的確に刺してくるのもあって、人気なのも頷けるし、やっぱりいつかアニメで見たい作品だなあと思います。

悪魔の孤独と水銀糖の少女 / 紅玉いづき

 

悪魔の孤独と水銀糖の少女 (電撃文庫)

悪魔の孤独と水銀糖の少女 (電撃文庫)

 

 愛して、願いをかなえるために、悪魔の住む呪われた島にやってきた、美しい死霊術師の孫娘シュガーリア。正義の名のもとに迫害され、やがて滅ぼされた彼女の爺様、婆様である死霊術師たち、その復讐のために。

美しく傲慢で、甘やかで残酷で、柔らかくもその生き様はただ苛烈で。愛されることを当然として、愛することを求め、己が想いを叶えるためには手段を問わない。あまりにも生から遠く死の匂いが濃厚な、既にあらゆる意味が剥奪された終わってしまった世界の中で、彼女が彼女であるために闘い続けるその精神だけが、強烈なエゴを纏い輝いているような、そういう印象を受ける物語でした。

 

以下ネタバレありで。

 

 

 

 

シュガーリアの在り方は、あまりにも美しく高潔で、ただ人の身にはあまりにも純度が高すぎるように思いながら読んでいました。そんなふうに在りたいと思っても、どう考えても形がついてこないというか。死霊の魂を喰らて捻じ伏せ、悪魔背負いにさえ「お前は人間か」と問われる、既に超越した何かというか、血に塗れたとえ形が崩れても、ただその精神性だけでいつか果てるまで闘い続けるような、そういうタイプの純度の高さ。それはもはや、概念としての少女で。

それはまあ、舞台であるこの死んだ島と、死霊術師である彼女の生い立ちに起因する、生物としての形への執着の薄さみたいなものかなと思って読んでいたのですが、そうか愛玩人形か、そうか、それは、その通り過ぎて、あまりにも正しくて、何もコメントのしようがないなあと。

少女という概念は人形の形をしている。傍らに悪魔憑きの男を侍らせながら、永劫の時を、純然たる異端として。これはそういう物語なのだなと感じて、ああ私これ滅茶苦茶好きなやつだと思いました。いや、ほんと、好きです。

BanG Dream! 5th☆LIVE Day2:Roselia -Ewigkeit-

 

Anfang

Anfang

 

 圧巻。THE THIRD(仮)が盛り上げたオープニングアクトからそのまま左右に履けて、シルエットで浮かび上がったまま始まる「ONENESS」、そして幕が上がればそこで演奏しているRoseliaという演出から、最後まで一分一秒を見逃させないライブでした。まあ凄かった。

まず、しばらく見なかった間にえらい上手くなってるんですよね。開幕から二曲「ONENESS」「Determination Symphony」で、あ、これ凄いって思わされるくらいに。そして、今回はRoseliaとしてステージに立つことを凄くモノにしている印象。ステージ上でもキャラクターを崩さないで演じる形で、最初に見た頃は演じている感もあったのですが、今回はもう完全にRoseliaでした。キャラクターがあって、演者が居て、これはRoseliaのライブなんだというこの感覚。

キャラクターがあるからこそああいうことが言えて、ああいう立ち振舞ができて、それが完璧に決まって、それを表現するのにこれ以上のハマり役はないんじゃないかと思わせる5人がいて、それでできあがる世界観みたいな。明らかに圧の増した歌と演奏のレベルアップもあいまって、この形式だからこそ表現できるものを見せてくれてとても良かったです。

そして相羽あいな、歌えば孤高、喋るとポンコツ感あるところまで含めあまりにも湊友希那という感じ。両側に工藤晴香と遠藤ゆりかが3人で並んでるのはまあ絵になります。そしてMCもキャラのままで崩したやり取りが普通に成立してるのも凄いなと。最高に笑ったVTR含め、トークが面白いんです。ビジュアル系バンドでめっちゃカッコつけてる人が、喋るとどこか天然でめっちゃ面白かったりするあの感じに自然となっているような。

 

そして今回のライブ、キャラクターとしてステージに立つなら一つのライブであり、けれど演者からすれば遠藤ゆりかのラストライブだった訳で。当然そんなことは全くないかのように今井リサとしてステージに立って、周りもそういうふうに扱ってライブは進んで、でもこのライブ、ドイツ語で「永遠」って冠してるんですよ。これまでを歌った「軌跡」って絶対にそういう曲なんですよ。でも、それがライブの中盤に普通に披露されて、そのまま「Re:birth day」という再生の曲に繋がっていく。カバーで今回初めて披露されたのは「深愛」ですよ。これがまた凄いアレンジで、歌はなんか明らかに気持ち入ってるんですよ。でもキャラクターとして立つからにはそこには一切触れない。

そしてアンコールを経て、これまでとこれからの曲だと言ってデビュー曲「BLACK SHOUT」。Cメロで暗転、静寂の中、もう一人のベースがステージに上って、初めて中の人のライブであることが表に出てきて、ラストは涙を堪えながらの「陽だまりロードナイト」。いやもうそんなん……と思いつつ、キャラとしてステージに立つこととこれはどう折り合いつけるのかなとも思ったのです。ですが、最後のMCで全てが回収されてもうね。

本編でこれ以上なく感じさせられた、この5人だからこそできたRoselia、この5人のキャラクターがRoselia。そしてアンコールでの、去っていく遠藤ゆりかと、新しく入る中島由貴と、これからも続いていく今井リサ。誰ひとり欠けても生まれなかったこの日のステージで、最後に「11人のRoselia」という言葉が美しく全てを回収していくの、あまりに完璧かよって。そしてまだ感情が追いつかないと語っていた明坂聡美が、最後の最後退場の瞬間に泣き崩れて、なんかもう私もダメでした。エモいとか言ってる場合じゃないって。そんなん泣くって。

 

キャラクターたちの物語があって、演じる声優たちの物語があって、全てをひっくるめてRoseliaのステージ。虚構も本当も入り混じって等価になって、取り巻くどんな出来事も感情も曝け出して、今ここで表現されていることだけがその場にいる人たちにとっての本物になって心を動かす感じ。ああこれがエエンターテイメントなんだと思います。凄かった。

魔法少女サン&ムーン ~推定62歳~ / サメマチオ

 

魔法少女サン&ムーン~推定62歳~ (バンブーコミックス)

魔法少女サン&ムーン~推定62歳~ (バンブーコミックス)

 

ライフイズビューティフル 

それが答えだ

末期ガンの告白から始まるという異色すぎる魔法少女モノは、実のところ突飛に見える要素を組み合わせて人生は美しいと謳うような、そんな一冊でした。

かつて子供の頃魔法のコンパクトを拾って魔法少女となったかず子と芳江。けれど、この作品における大事なところは変身して敵を倒すのとは別にあります。それは、2人が同時にコンパクトを開かなければ変身できないことと、変身が解除されて戻るのは、コンパクトに記憶された最初に変身した時点の身体だということ。コンパクトの記憶はある程度の期間もつから、それはつまり2人で一定周期で変身し続ければ永遠を生きられる。だからこれは、いつまでも成長しない自分たちの肉体からそれに気がついた2人の人生の物語。

流れていく周りの時間から切り離され、人の世に背を向けて2人だけで生きる百合的な永遠は、けれど長くは続かなくて。いつかは欧州で魔女になろうとうそぶく彼女たちにはそれでも関わる人達が居て、1人が恋に落ちて、それを聞いた1人は姿を消して、あっけなく動き出す時間。それが、巡り巡っていつしかお互いに1人になり、歳を重ね老婆になって、ガンに侵され初孫の顔を見るまではという理由で、再び2人だけの永遠を求める。一度はそれを手放した魔法少女たちにもう一度訪れる、永遠という人生のロスタイム。それは同時に、周りの時間から外れて生き続けるか、どこかで1人の人生を終わらせるか、その二択に向き合い続けるということ。

2人の関係と、周囲の人たちとの関係。非日常と言うにはあまりに強い生活感と、シリアスにもギャグにも偏らないバランス。踏み込みすぎない心理描写でどこか俯瞰するような目線で描かれているものは、まさに進み続ける時間の中を生きていくことなのだと感じました。出会いがあって、別れがあって、始まりがあって、いつか終わりが来る。残していくものがあって、失われるものもある。彼女たちが選んだ、2人の最後の時間。あっけなく訪れる終わりと、それでも繋がっていくもの。だからこその「時を超える真実」。

道具立ては飛び道具っぽく出落ち感もあるのですが、それでしか作れないシチュエーションから2人の少女だった老婆の人生を描き、人が生きていくということを静かに讃えるような作品だったと思います。このスタンスというか、語り口というか、作品の持っている距離感みたいなものがとても好きな一冊でした。読んで良かった。素晴らしかったです。