ヒトクイマジカル / 西尾維新

ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹 (講談社ノベルス)

ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹 (講談社ノベルス)

いや、面白いじゃないですか。
サイコロジカルがなんだかなぁと思ってたんですが、これは面白い。ようやく話が動き出したなぁという所、点が線になって、雰囲気も少しずつ変わってきています。最初の1章あたりは、何でこの訳の分からないコントを読ませられなくてはならないのかと思ったりしましたが、事件が始まってからの展開はかなり引力がありました。仕掛けはかなりよみやすいし、ちょっと考えると分かってしまうような事なのですけど、それにあたったキャラクターの反応とか、事件によって今までの要素要素が繋がっていって、話が全体として見えてくるのがすごく面白いです。当然まだまだ明らかになってない事だらけですが、話が進みだしたのが実感できるのがよろし。
なんにしても、小説全体の雰囲気の変化は、語り部であるところのいーちゃんの変化によるものなのでしょう。傍観者を決め込んでいた人間が、逃げる事しかしなかった人間が、あるいは無関心を貫いてた人間が、揺れて、揺らされて、ようやく当事者になって動き出す。いーちゃんが動き出した事でスイッチが入って、玖渚友も哀川潤も、他の周りも何らかの反応をしていくのでしょう。それはまた次の話でしょうが。それにしても、このいーちゃんの揺らされっぷりが、実にいいのです。そうだよなぁと勝手に思ったりしてしまいます。
さて、他ではラスボス登場だそうです。物語の傍観者にもっとも近いもの。或いは、いーちゃんのなろうとしたもの。他にも前シリーズまでのキャラクターが出てきて、シリーズがシリーズとして繋がってきたり。
しかし、赤き制裁、死線の蒼、橙なる種、危険信号だのやたら色にまつわる二つ名が多いのは何でなんでしょうね。