零崎双識の人間試験 / 西尾維新

零崎双識の人間試験 (講談社ノベルス)

零崎双識の人間試験 (講談社ノベルス)

戯言シリーズいーちゃん−ミステリ」でできた外伝小説。地の文が一人称じゃないのに驚いてみたり。戯言シリーズからいーちゃんを引いて殺し名を前面に出すとこうなるのかと思うのですが、それにしても完全にリアリティがないです。まぁ、私の感覚の問題なんですが、いーちゃんフィルターを通すと戯言シリーズの突飛な話も精神的にリアリティを持って読めたのですが、これは違う感じ。思考的にも物理的にも別の世界のお話。その分純粋にエンタテイメントとして面白いって気はしますが、戯言の感覚とは少し違った様相。文章は西尾節で、リズムよく読めるのは変わらないですけど。
話は殺し名「零崎」のお兄さんと零崎になろうとしている少女のお話。死色の真紅から零崎人識から弧面の男からオールスターキャストなのはさすがに外伝。元の世界がしっかりしてるからできるのでしょう。殺し名側の事情を掘り下げるのにも役立ってます。殺人鬼と殺し屋と殺人者ととかその辺の概念的なお話は、もはや破綻してるのか、私の理解が追いつかないのか、さっぱりさっぱりな感じでしたけど、もともと概念や思考を書き散らかす感じの作家なのでいつも通りではあるのでしょうか。それにしても人が簡単に簡潔に死にます。もっと有名になったら暴力的小説だと批判されそうな勢いです。殺す事と死ぬ事を問いにしたりしながらも、ざくざくと残酷描写が。そしてもう一つ表立ったテーマが家族愛。当たり前に人を殺す殺人鬼の家族愛とかもはやひねくれたんだかなんだか分からない感じです。それでもしっかり面白い話になってるのはさすがなのか。話の筋的にマンガになりそうな感じですが、この人は文章ありきの作家な感じもするので、映像化はちょっと困難な気がします。