断章のグリムⅠ 灰かぶり / 甲田学人

あー、これは学園異能だ。
主人公の男の子に非日常を持ち込む少女達、そのどこか類型的なキャラクター設定、なんらかの代償の上で宿る異能、発動の鍵は自傷やトラウマ、そして日常を破壊する神の悪夢。そんな感じに学園異能です。
話としては元形としての童話の形をとった神の悪夢が無意識の海から泡として浮かび上がり、その泡が宿った人間と周りの人間を巻き込み日常を壊し悲劇を呼びおこす。そしてそれをその泡に触れたことのある人間の一部が断章保持者としてその悪夢と闘っているみたいな感じ。本文にも設定解説が多く、こうやって書いてみると意外と説明が大変な割に頭にはすっと入ってきます。
童話を元にした悲劇ということですが、童話が元だからといってメルヘンだったりはしません。もっと暗くて黒いです。あと、ネタとなる童話の大体の説明はありますが、あらかじめ知っておくともっと楽しめたような気がします。ちなみにシンデレラではなく、グリム童話の灰かぶりです。
主人公やヒロインの過去のトラウマや、悲劇に巻き込まれる少女のおかれた状況など、どこまでも意地が悪い設定が多いのですが、そこまでアクは強くありません。むしろ小奇麗にまとまってる感じ。痛々しい描写やグロ描写も多いのですが、嫌悪感を呼び起こすほど酷くはないですし。ただ、色々と手堅くまとまってしまっている印象で、もう少し突き抜けたものが欲しいかなぁと思いました。魔女式みたいに突き抜けすぎてもそれはそれで困るのですが、ちょっとおとなしい印象でした。
満足度:B-