ハチミツとクローバー 9巻 / 羽海野チカ

ハチミツとクローバー (9) (クイーンズコミックス―コーラス)

ハチミツとクローバー (9) (クイーンズコミックス―コーラス)

掲載誌が廃刊になって、別の雑誌に移動したりという変化が作者にとってかなり大変だった模様。その影響が作品に出たのか出ないのかはわかりませんが、話の方もかなり大変なことになっています。
森田兄弟の過去清算話は、あくまでも世界設定的にイレギュラーなキャラクターだった森田さんを地上に引き降ろすための話という感じ。父親の影とお金にこだわる理由、ピーター・ルーカスとの関係、その天賦の才能と、それに対する兄のコンプレックスといったものが詰め込まれた話で、これだけで一つの物語になりそう。ただ、なんだか今までの話の中での独立色が強すぎて、いまいちピンと来ないような感じもしました。森田さんにはいつまでも特別な存在でいて欲しかったかなと言うのがあるのですが。でも、こういった話を挟んで森田というキャラクターを描くことで、はぐと竹本と森田の三角関係が決着に向かってるんだと言う印象は受けます。あゆと真山のほうはもう消化試合なので、後はこちらだけでしょうし。
そして、その決着へ向かっている印象を確定的にしたのがはぐに降りかかる事故。絵を描くということが人生のほとんどを占めていた少女から、絵を奪うというあまりにも重い話。はぐが強くあろうとすればするほど、竹本が自分の無力さに苦しむほど、読んでいる方も辛い気分です。森田のはぐに出した答え、先生とはぐの関係性、そういった部分も含めて次の巻で話が決着しそうな予感。まだまだ辛そうですが、楽しみでもあります。
二段モノローグや、緩急つけたテンポの良さは健在。安心して読めて、切ない気分になれます。
満足度:A-