ネクラ少女は黒魔法で恋をする2 / 熊谷雅人

読んでいてなんだかホッとします。相変わらず良作。
前の巻が綺麗に一冊でまとまっているような内容だったので、何でまた2巻と思ったのですが、あまり心配するような部分はなかった模様。全ての記憶がリセットされたところから、本当に普通に続き物として始まります。
真帆は前作(悪魔召還前)より少しだけ前向きになって、演劇部にも入部して高校生活の一歩を踏み出しています。それでも弱気だったり後ろ向きだったり心の中では強気だったりという部分はあまり変わっていなくて、そういった部分を抱えながらも勇気を出して前に進もうとしている姿に元気付けられます。
そしてこの巻の大きな軸となる話が1年生の神門。自分は誰からも受け入れてもらえないと世界に毒づく姿はワガママ極まりないのですが、彼には彼なりの理由があって……という感じ。彼が真帆との交流の中で変わっていく物語に、真帆への片思いは、真帆の恋心の行方は、そして廃部に追い込まれそうな演劇部の命運は、といったものを絡めてハートフルでちょっと笑えて優しい気分になれる良い話になっています。
とにかくこの話は出てくる人たちが皆良い人です。真帆の一人称の文章もどこか温かい感じがして、読んでいて心地良いです。神門が変わるシーンとか、もう少し段階があったほうが良いかなとか、全体的にどうにもご都合主義が過ぎないかとか思わなくも無いんですが、筆者がまっすぐで温かな作品世界を描いているので、これはこれで当然かなと思いました。

「この世界は、本当はずっと優しいものなんだよ」

という言葉と、人は変わろうと思えば変われるんだというテーマに全てが詰まっている感じです。
際物的なタイトルですが、王道な話を展開していてオススメです。
むしろ心配なのは魔法とか天使とか悪魔といった超常的な設定があまり表に出ると、話がどこか変な方向へ行ってしまうんじゃないかなぁということ。個人的には演劇部方面でハートフルな話を展開してくれることを希望します。
満足度:A