- 作者: 相田裕
- 出版社/メーカー: 角川HD(アスキー・メディアワークス)
- 発売日: 2006/07/27
- メディア: コミック
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幼女を中心に据えた残酷でちょっと美しい話に飽きたのか飽きないのか、前の巻辺りから登場キャラクターの平均年齢がグッと向上。ペトラも多分高校生くらいなのですが、今まで対比で見るといたって正常に見えるんだから、私はこのマンガにかなり毒されています。そして話の軸も、義体と担当官の関係性や義体を取り巻く不条理な現実といったものから、テロリストと国家の争いというもっと生々しいテーマに。新米対テロ対応官のペトラが闘いの中でさしはさむ疑問の数々に、その上司サンドロが答えながらテロリストと戦うという、まるで普通の話のような展開を見せます。もちろんこの前提にはペトラへの「条件付け」が毅然として存在しているのですが、今までの義体より条件付けが弱まっているということでかなり反応はナチュラルになっていて、ともすればその設定を忘れてしまいそう。そして後半のヒルシャーの過去と現在と検事の話に至っては、義体が義体である必要性がほとんど感じられません。
ただその部分を抜きにして、すごく良く出来た話でした。「いったい誰が悪いのか?」、「恨みの連鎖」といったテロ問題のテーマを真っ向から描いていて、これが面白かったです。ロベルタ検事の正義感に動かされるまっすぐさも、ヒルシャーの不器用さも、サンドロの割り切った考え方も、それぞれ納得できるもので、こういった状況の中で生きることの難しさを感じました。
まだ、クラエスの話などちょっとしたところで義体というものの不条理さを見せているので、この先どういう方向に物語を持っていくのか興味あるところです。
満足度:A