コッペリア / 加納朋子

コッペリア (講談社文庫)

コッペリア (講談社文庫)

人形と愛憎の物語。
2章の終わりまでを寝ぼけた頭で読んだら、最後の明かされた真実に全く頭がついていかないで混乱してしまいました。ミステリでこの書き方なのだから、時間軸にズレがあるか、登場人物そのものにズレがあるかの二択だと冒頭から考えて読んでいて、実際その通りだったのに分からなくなるとか大概に頭が悪いなと自分に苦笑い。しかし、ミステリだと思って仕掛けに対して身構えて小説を読むと、物語に没入しにくくなってしまうのが玉に瑕です。
それは置いておいてこの小説。人形師如月まゆらと彼女の作るまゆらドールと呼ばれる球体関節人形。そしてまゆらドールそっくりのアングラ劇団の女優聖に彼女のパトロンまゆらドールに魅せられた創二。それからやはりまゆらドールに魅せられた青年了が織り成す愛憎の物語です。
聖と了の語りで物語は進み、冒頭の全てを諦めたかのような了の語りと内面がドロドロした聖の語り出つかみはばっちり。すべてを計算付くで利用しようとしたり、ひたすら人形に耽溺したりする、この黒さというか、小説全体を覆っている薄い狂気のようなものが大変心地良かったです。小説の中心にいる人形そのものには何の感情もないのに、それを取り巻く人々の愛蔵渦巻くドロドロした感情に溢れたストーリーは非常に人間っぽい感じで、結局全ては人間のすることなのだなと思いました。でも読んでいて人形は欲しくなったり。ラストは結構前向きに終わっていて意外と後味が悪くなかったのは意外でした。
ただ、いろいろな人の感情が複雑に絡み合っていて、ちょっとごちゃつきすぎているような印象を受けました。ドロドロした感じを出すにはこのくらいの方が良いのかもしれませんし、それが少しづつ紐解かれていく3章は良かったのですが、もう少しすっきりしていたほうが好みです。
満足度:B