扉は閉ざされたまま / 石持浅海

扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)

扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)

スマートでシャープな印象。
ノベルスとはいえ200ページの短い分量で、必要最低限の描写でしっかりきっちりまとめてあるミステリでした。前半から仕込まれていた伏線が綺麗に繋がっていく、この無駄のなさはすごいと思います。
話は倒叙型のミステリで、屋敷で行なわれた同窓会を舞台に、最初に密室を作って殺人をした犯人と探偵役が事情によって開くことの出来ない密室の外で頭脳戦を繰り広げるもの。少しづつほころんでいく犯人のシナリオと、少ない情報から推理によって仮説を組み立てて真相に近づいていく探偵役のやりとりはなかなか面白かったです。屋敷の設定から、キャラクター周りの設定まで、全てがすっきりと繋がっていくラストへかけての展開は見事。ただ、あんまりすっきりとしているので、作為的なものを感じたりもしますが、この辺りはミステリとして割り切ったほうがいいのかも。
これは私がキャラクター小説に慣れてしまっているからなのかもしれませんが、キャラクターの薄さは感じました。犯人と探偵役のキャラはきっちり立っていると思うのですが、ほとんど踏み込んだ描写はないので、その辺りを期待すると肩透かしかも。ただ、魅力を感じない訳ではないですし、この結末を迎えても後味が悪くならないでパズルが解けたような快感が得られるのは、キャラクターに踏み込みすぎていないからかもしれません。そこら辺の距離感のとり方は上手だと思います。ただ、動機に関しては、もう少しキャラクターに踏み込んだ描写が無いと納得し難い面があったかとは思います。
全体的に非常によくまとまっていて、巧いなぁと思いました。計算された知的さのようなものが好きな人は気に入るタイプの本だと思います。
満足度:A-