1000の小説とバックベアード / 佐藤友哉 (新潮12月号掲載)

新潮 2006年 12月号 [雑誌]

新潮 2006年 12月号 [雑誌]

久しぶりに思いっきりユヤタンを読んだという感じでした。信者は満足です。
内容に関する考察や批評はきっと文学の偉い人たちがやってくれるというか、私にはこれが純文学の中で一体どういう風に評価されるのだか皆目見当がつかないし、褒められていたら怪訝な顔をして叩かれていたらムッとすると思うのですが、とりあえず佐藤友哉が好きな人はそれなりに楽しめるんじゃないかなと思います。
弱者の話と小説を書くことに関する話がこの人のよく書くテーマだとすれば、これは後者の方。小説を書くことについて、小説が読まれることについて、小説の歴史について、なんだか色々と書いてありますが正直1回読んだだけじゃよく分からない感じ。イメージとしては、言葉が連なってぶわーっと流れ続けるような。
どちらかというと、過剰でアンバランスな文章と妄想と、作者の思想だか小説だかわからない展開と、いろいろなものを集めてきたようなジャンクさと、天然なのか計算なのかわからない部分と、混沌としているのかすっきりしているのかわからない構成と、メタのようなネタのようなベタのような、なんだか分からないけどこれはユヤタンの書いた小説だという感じが楽しかったです。あまりにも身も蓋も無く自分の迷いも想いもぶつけているような感じもするのですが、どこかでこれも計算だよといっているような感じもして、でもそれがフェイクかもしれないような変な感覚。いろいろなものを集めて作ったようで、でもこれはこの人の小説でしか無い不思議さ。
ゴチャゴチャ言ってもとにかく、読んでいるとなんだか凄く馴染むのが佐藤友哉が好きだという理由なのでしょう。
灰色のダイエットコカコーラと鏡家ナインストーリーズも早く本にならないかな。
満足度:B+