銀月のソルトレージュ ひとつめの虚言 / 枯野瑛

これは良作。続きが出ると良いな。
県や魔法の時代から少し後の時代のファンタジーで、学園都市を舞台に主人公が魔法使いの闘いに巻き込まれるという、極めてオーソドックスな話。雰囲気的には中世ファンタジーと異能バトルや伝奇のちょうど中間くらいの感じです。ファンタジー的な雰囲気が少し苦手なこともあり、読み始めはちょっと退屈かなと思っていたのですが、魔法の設定が明らかになるあたりから俄然面白くなりました。設定自体はそこまで凝ったものでは無いのですが、しっかり物語の中に馴染んでいます。話のほうも5年前の記憶、劇の練習を通じて描かれる伝承の話、そして現在進行形の物語が一つのののとして繋がっていく辺りの流れが手堅くて楽しめました。全体的にしっとりとした雰囲気ながら、ちゃんと盛り上がるところでは盛り上がるのも素敵。
キャラクターもなかなか良かったです。ジネットの融通は利かない信念で突っ走っていく性格も、リュカの優しい性格も、アリスのふにゃふにゃしながら芯はしっかりしてる性格も、嫌味が無く魅力的。でもキャラクター的にはちょっとずれたお姉さんなフィオルが素敵でした。私はこういうキャラクターに弱いです。
ストーリー的にはきっちり終わってる印象ですが、よく考えるとかなり取り返しのつかない悲壮な状況で終わっているので、続きがどうなるかは興味あります。あと、このままで終わらせると、前半のアリスとリュカの友達以上恋人未満っぷりの関係性が、本編の中で全く生かされないまま終わってしまって悲しいことになりますし、フィオル関連の話だってここで終わって欲しくないので、是非続編を出して欲しいところです。
全体的にきっちりと作られた、飛びぬけて凄いということはないけれど十分に満足のいく良作でした。
満足度:A-