GOSICKⅥ 仮面舞踏会の夜 / 桜庭一樹

抜群の安心感と安定感です。
GOSICK第6巻は、ベルゼブブの頭蓋から帰る途中の久城とヴィクトリカが巻き込まれた奇妙な事件の謎解きを表に、その事件の裏にソヴュールにおける科学アカデミーとオカルト省の対立を持ってきて、大きな意味でのGOSICKの物語もいよいよ二度目の嵐が目前に来ているのかという感じです。
電車内で出会った奇妙な人々と、その中の一人が毒殺されるという事件はなかなか。前半で事件の概要、後半で容疑者の自白パートと分けてのフーダニット。ただ、このキャラクター達が最初から<木こり>だの<孤児>だのと名乗って正体を隠す上に奇行を繰り返すのでなかなか読めません。伏線も綺麗に張って、話もきっちり着地してるのでなかなか面白かったです。
ただ、それよりもこの巻の見所は、固い絆で結ばれつつあるヴィクトリカと久城の様子でしょう。お互いのお互いへの強い信頼がそこらじゅうから滲んできて、微笑ましくもあり、この二人ならばこの先どんな運命が待ち受けていても大丈夫だと頼もしくもあり。素直ではないながら、ヴィクトリカが久城に対して明確な好意を向けるようになったのも可愛らしいです。
話のほうは二人を大きな波に巻き込む国内の対立と、国外での戦争が大きく影を落としてきました。今回はその中で大人にいいように扱われる子ども達というモデルが全面に出ている感じ。世界と大人に対して抗う子ども、闘う子どもというモチーフに、桜庭一樹作品らしくなってきたなぁと思います。これは久城とヴィクトリカにも当てはまることで、二次大戦という戦争の中で灰色狼と日本人留学生がどんな運命を描くのか、その行く末を見守りたいと思います。
ただ次は短編集ということでその話はまだ先のことになりそう。当面は久城とヴィクトリカの学園生活を見守ることが出来そうです。
満足度:A