れじみる。 / 藤原祐

れじみる。 (電撃文庫)

れじみる。 (電撃文庫)

たしかにほのぼの100%ではありました。
レジンキャストミルク番外編。いつもはダークな物語の中で殺し合いをくりひろげている虚軸達のほのぼの日常ライフ。要するに本編の前半部分のテンションをさらにコメディよりにしてある感じです。短編集ですが、きっちり本編とのリンクもあってにやりとさせられる部分も。
話のほうはちょっとずれた感覚が楽しいです。硝子の語りに顕著ですが、大真面目にちょっと間違ってたり、どことなく「それ違う!」と言いたくなるような感じは面白いです。基本的にキャラクター達がずれているので、日常的なことをさせたときにそこが面白いのかもしれません。なんにしても、ずいぶん笑わせてもらいました。
話のほうはしっかり笑えたり、ちょっとしんみりしたり。プリン好きの秘密が明らかになったりもします。中でも里緒の話が良かったです。他人を認識できなくても、他人からは認識できるという事実が、日常を切り捨てている彼女の心にどれだけ届くのか。他の短編でもなんだかおっちょこちょいなキャラの定着してきた蜜やクールに振舞ってる殊子の情けない姿とか、ファンサービスがいっぱい。レジン本編が好きな人なら読んでハズレはないと思います。
ただ、虚軸たちの幸せな日常を見せられ、彼女らが日常の楽しさを少しでも噛み締めるたびに、これがこの先絶望のどん底に落すための前フリのように見えるのは仕方がないのか……。文書の中にダークさがちらちらとのぞいてることもあり、この幸せさが張りぼてのように見えてどこか空しい感じがします。鬱展開が持ち味とされる藤原祐ですが、せめてこのキャラクター達には幸せになってもらいたいと愛着を感じ始めている自分を感じ、それすら作者の掌の上なのかもしれないと思いました。
イラストとのコラボレーションはハイレベル。キャラクター原案に関わってるだけあって、各章についてくるマンガもしっかり作品世界を表現していますし、細かい部分も抜かりなし。イラストをつけるなら、この位のクオリティでやってくれるとこれぞコラボレーションという感じだなと思いました。
満足度A