不気味で素朴な囲われた世界 / 西尾維新

不気味で素朴な囲われた世界 (講談社ノベルス)

不気味で素朴な囲われた世界 (講談社ノベルス)

きみとぼくの壊れた世界に続く「きみとぼく」本格ミステリ第二段。
久しぶりの西尾維新だったのですが、相変わらずのぶっ飛んだキャラクターに軽妙なやり取り、そして何より病んだ作風にどこか安心を覚えたり。冒頭のこぐ姉とぼくの会話にはやられました。笑いが堪え切れない。
そして事件発生後からのミステリ展開のまた捻くれたこと。探偵役となる病院坂迷路の全く無口で尚且つ雄弁という凄いキャラにはびっくり。そして、不完全な犯人と不完全な探偵という、答えが論理的に導き出せるというミステリの土台部分を嗤うかのような謎ときと、最終的に明らかになる何とも後味の悪い真相はさすが。
それでもなにか、強烈なインパクトには欠けるような気がするのはキャラクター達にも作品自体にも、どこか切迫した何かとでもいうような、尖ったものが欠けてるように感じるからか。私が年を取っただけかもしれませんし、もしかしたら作者が丸くなっただけかもしれませんが、なんだかこれはこれでよくまとまったエンターテイメント作品に思えてしまうという。それはそれでおかしい気もしますが。
ただ、結局は囲われた世界の中での稚戯であるというのは作品内でも何度も語られることで、意図的にそうしている可能性も。囲いの中だけを描きながら、囲いの外に明らかに何かがあることを示していることは印象的でした。結局、「囲われた/壊れた」や「本物/偽物」の決定的な違いは私には理解できなかったので何とも言えない部分もあるのですが。
それにしても、あとがきでああいう言い方をされるともしかしたら騙されていたのではないかと疑心暗鬼に陥るのですが、彼女は彼女じゃないのですか……?
満足度:B+