さよならピアノソナタ2 / 杉井光

さよならピアノソナタ〈2〉 (電撃文庫)

さよならピアノソナタ〈2〉 (電撃文庫)

民族音楽研究部に真冬が正式に加わって、合宿だとかライブだとか、ようやくバンドが動き出す話
相変わらずとても綺麗な音楽と青春の物語でした。フェケテリコという先輩、ナオ、千晶、そして真冬の4人によるバンド。4人を結びつける、微妙で繊細な感情の揺らぎが良かったです。バンドと自分の距離を測れないで、逃げ出しそうになる真冬。すべてを思い通りにしてしまうよう傲慢さを持ちながら、意外な弱さを見せる先輩。真っ直ぐで一途な思いを見せる千晶。そして、4人でバンドをやりたいという意思は見せながら、とんでもない鈍感さで物事をこじれさせてしまうナオ。悪気はないというか、むしろ良くしようと思っているのにも関わらずのこの鈍感さは、もはや罪なんじゃないかと思うくらい。そのナオがある意味で中心にいるバンドだからこその、この微妙な感情の交錯する不思議な人間関係な気もしますけど。でも普通に考えたらこれ、本当に紙一重のバランスで成り立った、かなり危ない状況な気がしなくもないのですが。
分かり合えそうで分かり合えない展開が、ライブという舞台でクライマックスに達する辺りは読んでいて非常におもしろかったのですが、ちょっと物足りなかったのは真冬がずっと委縮しちゃっているような感じがしたこと。怯えて竦んでしまう姿も真冬なのでしょうけど、その中にある圧倒されるような何かを感じることができなかったかなと思います。
そして、1巻が本当に大好きなだけに、この巻単独で見たら面白いと思っても、やっぱり蛇足感は否めない感じが。それでも、まだフェケテリコはようやく羽ばたき始めたばかり。書き散らす感じがある作者なのでちょっと心配ではありますが、この2巻があるのならば必ずこの先を、続きを出して欲しいなと思います。