ミステリクロノ2 / 久住四季

ミステリクロノ〈2〉 (電撃文庫)

ミステリクロノ〈2〉 (電撃文庫)

身勝手な愛情の物語。
時間を操るアイテム「クロノグラフ」を扱ったミステリ第2作。今回は人の過去の時間、すなわち記憶を奪うクロノグラフメメント」が登場。秋永という半年分の記憶を失った少年、その秋永に因縁をつける2人組、2人組が慕うショウジという存在、不登校となった秋永の家に通い詰める秋永の彼女羽澤。秋永の失われた半年間に何があったのか、誰が秋永にメメントを使ったのか、そういった謎に、慧、真理亜、武臣、小布院の4人が挑む形。
次第に明らかになっていく事件の中に潜むのは、自分勝手な想いが交錯する苦い真実。誰かを想わずにはいられない人の業と、人を惑わせるクロノグラフの力。事件がまざまざ見せつけるものは、天使であった真理亜とクロノグラフに一番近い所にいる慧の身に直接に跳ね返ってくるのでしょう。これから先、まだ続いていくだろうクロノグラフを巡る事件の中で、慧が何を思い何を為すのか、るちあの言う答えがどういうものなのか、注目したいです。
ただ、シリーズ全体としてとらえないでこの1冊としてみると地味さがぬぐえない感じが。良くも悪くも派手だった前作「トリックスターズ」に比べて、キャラクターも事件の構図もちょっと地味すぎる感じで盛り上がりきらなかったかなと。謎解き的にも、慧が淡々と真相を暴いてしまうので、読者としてはただただ傍観者になってしまうような感じですし。
ただその辺りは、物語の構造的に限られた条件の中で話を作らないといけない結果なのかなという気もするので、より作品のテーマに迫っていくであろうこの先に期待しています。