化物語 下巻 / 西尾維新

化物語(下) (講談社BOX)

化物語(下) (講談社BOX)

上巻から間が空いてしまいましたが、こんなに面白いなら早く読んでおけばよかったです。
上巻を読んだ時点ではいまいち物足りないかなぁと思っていた化物語なのですが、話数を重ねるごとにどんどん面白くなっていきました。どいつもこいつも強烈な個性を発揮して呆気にとられそうになるキャラクターたちが、読み進めるほど魅力的に思えてくるというマジック。
下巻では阿良々木の誰にでも優しく鈍感という性格が、怪異に関わってくる形で表に出てきている感じ。誰にでも優しいということは、結局誰も大切ではないということで、この辺りの人間そのものへの興味の薄さとか、怪異への親和性の高さとか、意外と一番危ない所に居るキャラクターが阿良々木なのではないかと思います。だからこそ、始めて好きだと思えた戦場ヶ原の存在は大事なのかなとも。一人称の語りからそこがあまり伝わってこないのがアレな気もしますが。
そんな性格もあっての最終話「つばさキャット」なのですが、しかしこれ何重かフィルターをかけているけど要するにヤンデレ話なんじゃないかという気がしなくもなく。誰にでも優しい鈍感は罪ですね。
これだけ濃いキャラクターをたくさん生み出せる作者の力量は驚くべきものがあって、みんなそれぞれ魅力的ではあったのですが、最後まで読んでもやっぱり戦場ヶ原が個人的には一番好き。遠回り過ぎる愛情表現の後に直球が来る緩急に翻弄されました。
趣味で書いたものと作者が公言しているだけあって、好きなもの詰め込みで全体のバランスとかストーリー展開とかは少しどうかと思う部分もあった小説でしたが、テンポの良い掛け合いなど読んでいて楽しい小説でした。あとがきにあるように手遊びでこれを書いたのなら、さすが西尾維新という感じ。
ここでは描かれなかった忍絡みの話である「傷物語」も講談社BOXから発売されるようで、楽しみにしていたいと思います。