よくわかる現代魔法 １ new edition / 桜坂洋

よくわかる現代魔法〈1〉 (集英社スーパーダッシュ文庫)

前々から気になっていた作品だったので、新装版となった機会に読んでみました。
これは大変好み。魔法とコンピュータを結びつけた設定が、魔法が出てくる話も好きならデジタルな技術も好きな私の心を撃ちぬいていきました。魔法のコードがPCの上で走って、それがネットワークを通じて世界に広がって奇跡を起こすなんてイメージするだけで、なんだかちょっと楽しくなれる気がするのです。
そんな設定部分だけでなく、キャラクターもなかなか魅力的。ドジなこよみが出会った魔法の世界、巻き込まれていく事件の中でダメな自分から脱却しようと頑張る姿が良い感じ。たとえ使える魔法はドリフでも、救いようがなくトロくても、後ろ向きな自分を変えていく真っ直ぐな思いは素敵なのです。
そんなこよみだけでなく、誇り高い古典魔法の使い手弓子や、さばさばした態度のなかに優しさを見せる現代魔法の第一人者の美鎖、そしてこよみのクラスメイトでPCが得意な嘉穂も魅力的。特に無口でPCにやたらと強くてちょっとマッドサイエンティスト気味なところのある嘉穂が可愛いのです。以前に「10月はSPAMで満ちている」を読んだ時に一目ぼれしたキャラクターではあったのですが、改めてその魅力を見せつけられた感じ。
そんなこんなで設定とキャラクターは大満足なのですが、ストーリーはちょっと物足りない感じも。何人かのキャラクターの行動から断片的に明かされていく謎は面白かったですし、クライマックスもしっかり盛り上がっていたとは思うのですが、もう一つ足りないような、小さくまとまっているような気もするのです。
とはいえ十分楽しんだので贅沢な悩み。期待をしつつ続きを読んでみようと思います。