しおんの王 8巻 / かとりまさる・安藤慈朗

しおんの王(8) <完> (アフタヌーンKC)

しおんの王(8) <完> (アフタヌーンKC)

表紙の彼女が笑顔でいるから。
将棋+サスペンスという珍しい組み合わせの物語も遂に最終巻。トーナメント決勝となるしおんと羽仁名人の対局が進む中、8年前の事件の真相が明らかになっていきます。
両親が殺されたという過去の事件と、将棋を指している現在の紫音。その間を埋めるように謎が解けていき、真実は紫音にとって重く。それでも、自らの答えを持って、自らの将棋を指す彼女の姿には、彼女の強さと、彼女を支える人たちの温かさを感じてグッとくるものがありました。
最終巻まで読んできて強く感じたことは、このマンガのキャラクターたちは皆人生を賭して闘っているのだということ。横山刑事のように事件の捜査に執念を燃やす人もいますが、やはりその中心にあるのは将棋。棋士にとって、将棋とは人生であり、盤上とは己をかけた闘いの場であり、だからこそ殺人事件という人の一生を塗り替えるような事件と将棋の世界が違和感なく物語の中で繋がっていったのかなと思います。犯人の動機にしても、常人には理解できない、けれどもそれはその人の生き様の結晶なのですし。
そうやって生きている人たちの物語だからこそ、どのキャラクターも非常にカッコよく見えました。羽仁兄弟も、神園先生も、安岡先生も、他の人たちも、自分の信念を持っている人は素敵なのだと思います。
そして最終話。描かれる紫音と歩の二人の姿の中でのあの出来事は、ベタといえばベタな者だとは思いますが、彼女がどれだけの想いを抱えて、どれだけの想いを受けて闘ってきたのかを考えると、やっぱり感動するし泣けてくるものがあります。
彼ら彼女らが受けた傷は、事件が解決を見ても、将棋でどれだけ上に行っても無くなるものではないし、どこまでも付いて回るものだとは思いますが、それでもこの二人とその周りの人たちならきっと大丈夫。願わくば、彼女らの未来に幸せがたくさん溢れていますように。