ぶよぶよカルテット / みかづき紅月

ぶよぶよカルテット (一迅社文庫 み 1-1)

ぶよぶよカルテット (一迅社文庫 み 1-1)

音楽は楽しいもの。そんなシンプルなメッセージが賑やかなラブコメに乗せて描かれるのが非常に良い感じの作品でした。私に音楽の才能はないけれど、何かやってみたいなと思うくらいに。
音楽は昔やっていたけど今はやめてしまった少年琢己が出会ったのは、美人だけれど校内きっての変人でサティを偏愛する音楽家でもあるトリルという少女。彼女に巻き込まれるようにしてまた音楽を始める琢己は、その中で天才であり変人であるトリルを知るにつれて惹かれていきます。
そこに琢己の幼馴染でプロの音楽家である凛音が絡んできて、トリルとの意外な関係が明らかになったり、トリルの親友にしてやっぱり天才で変人な芸術家の真里亞が帰国したりでラブコメ目的にも賑やかに。お互いの持つ音楽に対する信念からトリルと凛音がぶつかったり、真里亞が突飛な行動をしたり、凡人である琢己は散々振り回されながらも、みんなで作り上げた舞台は本当に楽しそうで。
特に何をするでもなく琢己がやたらとモテたり、何もかもが上手くいきすぎていたりと妄想をフィルターをかけずにそのまま具現化したようなストーリーは直球すぎてちょっとと思う部分もあったし、作者がもともと美少女文庫系の人だからか、ごくごく自然に下っぽいネタを織り交ぜてくる所なんかはいまいち慣れなかったのですが、それを差し引いても楽しさの伝わってくる良い作品でした。トリルの言うぶよぶよしてるって、こういう感じなのかなと。
キャラクター的にも、変人で頑固で、でも普通だったり弱いところを見せたりするトリルは魅力的だし、琢己を始め、そのトリルと関わっていく人たちも魅力的。何より、喧嘩したりぶつかったりすれ違ったりもしながらも、前向きで明るくて楽しそうで、音楽って良いな、青春って良いなと思わせてくれるようなところがこの作品の最大の魅力なんじゃないかなと思います。