世界制服 1巻 / 榎本ナリコ

世界制服 1―ユニ・フォーム (サンデーGXコミックス)

世界制服 1―ユニ・フォーム (サンデーGXコミックス)

まさにカオスという言葉の似合うギャグマンガでした。
オタクネタを使うギャグマンガというのは最近良く見かけますが、小ネタではなくて「オタクの好みそうなパターン」をそのままギャグ化しているものはあまり他に見ないかも。
なにしろ「超能力×セカイ滅亡」、「アンチエイジングでロリ化する母親&2人だけ残されたリアル高校生」、「創造主(うp主)と作られたバーチャル美少女」、「最終兵器彼氏」、「フィギュアたちが人格を持っていてああだこうだ言う話」、「週末の日の後に島に一人残された男と美少女アンドロイド」というテーマだけを拾ってくると、なんというかいかにもなところを的確にチョイスするなぁという感じ。
そしてそこからがこの作品の凄いところで、そういうテーマ自体を冷めた視線でブラックな笑いに変えながら、まるで予測のつかない方向に話を持っていきます。人間の願望やオタクの妄想の身勝手さをバッサリと切り捨てる黒さがありつつ、別にそれを全否定する訳ではなく、とんでもないけれど意外と前向きなオチにたどり着くのが何とも不思議な感じ。
作者のホームグラウンドなやおいネタからニコニコ動画Vocaloidや金髪縦ロールお嬢様はツンデレみたいな小ネタは、詳しくなければできないような感じで、そうなるとこのマンガは荘大な自虐と自己肯定なのかなとか、要らない想像をしてしまったりも。
話の中で面白かったのは「創世記」。ヴァーチャルな創作物に自律人格を持たせたら、という話なのですが、創作物を愛でることの身勝手さを見せられるようで色々いたたまれない感じ。そしてオチがそう来るかという皮肉な感じでなんだか乾いた笑いが。
そんな感じで面白かったのですが、分かっているからそこには触れなくていいのにと思ってしまったりもする部分もあって、どこか居心地の悪い感じがしてしまうマンガでもありました。