さよならピアノソナタ 4 / 杉井光

さよならピアノソナタ〈4〉 (電撃文庫)

さよならピアノソナタ〈4〉 (電撃文庫)

終わらないものなんてない。でも、繋がっていくものはある。
音楽と青春の物語、さよならピアノソナタ完結編。最後まで本当に綺麗で切なくて、そして愛おしい物語でした。最高。
順調のように見えたフェケテリコ。進展しそうで進展しない真冬とナオの不器用な関係。先輩と千晶のナオへの想い。それはそれで幸せな時間でも、決していつまでも続かないもの。間違いは一つずつ重なって、大切なものは気がつかぬうちに壊れていくから。
本当に最後までバカでヘタレで神がかって鈍感だったナオの、先輩と千晶との関係の決着。そして真冬との関係の行方。怖いから、勇気がないから、相手の気持ちが分からないからと伝えられなかった気持ちのツケは確実に溜まっていって、いつかかけがえのないものを失う。真冬という片翼を欠いたフェケテリコの決死のフライトは、そこに欠けたものの大きさを感じるほどに胸が痛くて。
言葉ではお互いに何も伝えられない意地っ張りで意気地なしな2人を結ぶものはやっぱり音楽。お互いがお互いのためを思いながら上手くいかない、もどかしい関係ではありましたが、そこから始まった物語が、そこで閉じてまた未来に繋がっていくという構成は、美しくて彼ららしいものでありました。永遠なんてなくたって、続いていくものはちゃんとある。まさに青春ものの醍醐味が音楽という要素にしっかりとマッチした作品だった思います。
そしてそれぞれのキャラクターたちの魅力。結局最後は音楽しか依るところのない誰よりも音楽バカだったナオに、それと同じくらい不器用だった真冬。無駄なあがきであろうと最後まで闘った先輩のずるさと強さ、隣で見守り続けることしかできない千晶が抱えていたであろう苦しさ。そして2人のことが好きだから、2人のために何かしなくちゃと焦るユーリに、ヘタレでろくでなしなくせに最後の最後でカッコ良いところを見せてくれた哲朗。それぞれのキャラクターが本当に魅力的だから、物語全体が素敵なものになっているのだと思います。
一つ疑問があるとすれば、こんな素敵な人たちに何故ナオのような朴念仁がモテまくっているのかくらいでしょうか。こんなに多くの人に愛されているというのに、ナオは本当にもう……。
そんなところもありつつ、とても素敵な物語でした。音楽が好きな人にも、青春ものが好きな人にも胸を張ってお勧めできる作品です。大好き。