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とらドラ・スピンオフ! 2巻 虎、肥ゆる秋 / 竹宮ゆゆこ

☆☆☆☆☆

とらドラ・スピンオフ2! 虎、肥ゆる秋 (電撃文庫)

とらドラ・スピンオフ2! 虎、肥ゆる秋 (電撃文庫)

下手をすれば直視できなくなりそうな生っぽい感情を、どうしてここまでラノベらしいラブコメの中に落としこめるんだろうと思わず感心した短編集。
竜児と大河の仲良しっぷりがこれでもかと拝めるエピソードの数々は、本当にもう家族のようだなぁと思う2人の関係にどこか微笑ましい気分に。ただこの、疑似家族ちっくな馴れ合い関係の行く末が本編の現状だと考えると、単純に微笑んでもいられないような気もします。確かに居心地は良さそうで楽しそうな関係だけど、方向性を間違えたまま進み過ぎちゃっている気持ち悪さ、みたいなものもあるというか。でもやっぱこのぬるーい感じのべったりさは良いなぁとも思うので複雑な感じ。
エピソードの中では、大河のダイエット話が軽くホラー入っていたことに女性作家の凄身を見たり。太ることがここまで恐ろしいことだと感じるコメディは初めて見たぜ……。
ただ、この短編集の真骨頂は春田メインの「春になったら群馬に行こう!」と独身(30)がまだ若かったころの話「先生のお気に入り」。
「春になったら群馬に行こう!」は、恋愛関係に行き詰って自分を傷つけようとしていた女子大生瀬奈の前に、どうしようもないアホだけど純粋で良い子な春田が現れる話。この組み合わせだけでなんかもう勝った感じすら漂いますが、瀬奈の脆さや危うさそれ故の魅力、そしてそんな瀬奈だからこそ、打算丸出しなアホだけど根は真っ直ぐな春田にどれだけ救われたのかが、短い中にも鮮やかに描かれてて凄かったです。アパートでの一件はちょっと鳥肌もの。あと、芸術科の瀬奈が見せる表現者としての在り方みたいなものも印象的。
「先生のお気に入り」は独身の新任の頃の話で、登校拒否で人一倍傷つきやすい少年に半ばストーキングされかけちゃったりする話。教育者としてはもちろん、ゆり先生の等身大なの人としての魅力に溢れている素敵な話でした。当たり前に迷ったり、当たり前に弱かったりしながら、でも大人として子供たちと向き合えるゆり先生は、限りなく理想的な教育者なんじゃないかなと思います。
こういう少し年齢層が上だったり、大人メインだったりする話を、正面からライトノベルとして描けるのはさすがだなと。いつかこの作者の大人向けライトノベルが読みたいなと思った一冊でした。