アカイロ/ロマンス 2巻 少女の恋、少女の病 / 藤原祐

それを楽しんでいる自分の悪趣味さを突きつけられるマゾヒスティックな快感が、この人の小説に感じる気持ち良さの根源なんじゃなかろうかと、ちょっと思った第2巻。
景介と灰原と枯葉の関係にしても、型葉のキャラクターにしても、自覚的に組み上げられた趣味の悪さが大変素敵です。そしてそういう世界を作っておきながら、最後に依るところはロマンティックなまでに人の純真な部分であるというツンデレ的なところも。
そんな感じで、藤原祐作品に関しては、作品も好きですがそれ以上に作家萌えな私。
それは置いておいて第2巻。鈴鹿の者たちに関わるということがどういうことかを突きつけられる景介が覚悟を決めるお話、といったところ。自分が好きだった少女の体を持ち、その記憶をある程度受け継ぎ、そして自分に夫になれと言ってくる異形の少女に対してどう向き合うかとか、何てどうにもならない問いなのかと思ったのですが、枯葉と景介の対話がそれを乗り越えられそうな強いものでちょっとびっくり。最後の闘いでの景介の言葉にはちょっとゾクっとくるものがありました。
景介は鈴鹿の者たちのように力は持たないただの人間ですが、弱さを抱えつつも見せるその強さの真っ直ぐさはカッコ良いと思います。テーマ的にも人間の在り方と、信じ合うことが押し出されていきそうな印象ですし、この先彼がどういう姿を見せてくれるのかに期待。
でもなんというか、景介は完全にヒロインポジションというか、枯葉が主人公ポジションというか、王道をひっくり返したような感じで面白いです。憎しみに駆られ暴走する主人公をヒロインの必死の言葉が引き戻す! みたいな。
そしてこの巻は型葉! 狙い澄ましたとしか思えない気持ち悪い設定の戦闘幼女。しかも主人公を罵るとか、素晴らしく狭い層をロックオンな感じ。本家守護者で武器が鉄爪で、主人公にしだいに心を開いていくとかとてもストライクでどうしてくれようかと。
虐待を受けていたと思しき体の持ち主、そして猜疑心の強さと人間を過剰に憎む理由。明らかに踏み込むべきではない過去がありそうですが、そこはこれから先きっと物語的に重要な部分になってくるのかなと。
あとは「つうれん」のインパクトが素敵。245ページのイラストは、本当にセンスの勝利。
そんな訳でやっぱり好きな作品。3巻にも期待です。