- 作者: 宮沢周,久世
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2009/09
- メディア: 文庫
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自らの「男」を抜刀したカタナで闘うアンシー達の物語。少年が「男」を抜いて闘うから、抜けている間は女の子になるよね! という衝撃の一発ネタで始まるTS学園異能バトルは、アクの強すぎるキャラクターに、ハイテンションな展開、そして豪快過ぎる設定でラストまで失速せずに駆け抜けていきました。クセは強いし、悪趣味だし、突っ込みどころには事欠かないような気もするのですが、それすらもねじ伏せる得体のしれないパワーは、さすが新人賞作品という感じ。
主人公のトモが素でアホの子に思えたり、トモに折られたミツウさんの愛が歪み過ぎて怖かったり、TS後よりTS前の方が可愛いという衝撃の女装少年リキオウマルさんだったりというキャラクターの濃さももちろん、むしろそのキャラクターが織りなす倒錯上等な恋愛模様が大変。女の子になっている時でも元は男だし、でも二度と戻れないならそれは女の子で……みたいな混乱に、見た目女の子ばかりだけど良く考えたらこの小説のキャラクター男子率高すぎない? という素朴な疑問がさらなる混沌を招いて、逆に面白いような状況になっています。
そんなところもありつつ、バトル部分はまさに男の闘いだったりするのでなんとも。トモ自身の想いや他のアンシーの想い、そして過去に起きた事件が絡んみ熱とか勢いとか信念とか拘りが渦巻いていて、これまた濃厚な感じになっています。
それにしてもこの小説、TSもので女の子ばかりなのに、思考パターン的には男らしさ至上主義で埋め尽くされているのが不思議な感覚でした。男子校が舞台でTSものだからこそ、キャラクターたちが男らしさにこだわってそうなるのかもしれませんが、余りにも男性優位な感じでちょっとどうかと思うところも。それを言いだすと、そもそも男を失って女になるという設定からしてどうなのかというのもあるのですが。
そんな感じでどうかなと思う部分もありつつ、なかなか得難い混沌と荒削りなパワーを感じる1冊でした。物語はまだ色々と謎を残しているので、続刊で何を見せてくれるのかにも期待していたいと思います。