ゆびさきミルクティー 8、9巻 / 宮野ともちか

ゆびさきミルクティー 8 (ジェッツコミックス)

ゆびさきミルクティー 8 (ジェッツコミックス)

ゆびさきミルクティー 9 (ジェッツコミックス)

ゆびさきミルクティー 9 (ジェッツコミックス)

こんなにもピュアでセンチメンタルなのに、どこまでも変態なマンガを私は他に知りません。
3年ぶりの新刊、しかも2巻同時発売、おまけに連載再開と待ちわびていたファンに大きなプレゼントを届けてくれた最新刊。
相変わらず水面(クラスメイト)と左(幼馴染中学生)の間で揺れたり、女装して亘(クラスメイト男子)にまで手を出したり、新キャラのクラスメイトにも手を出したり、友人の幼馴染にも手を出したりと言葉にすると最低な感じの由紀は、実際に色々と最低ではあるのですが、少年少女の揺らぐ感情を透明感のある絵で繊細に描いているものだから、何かこれはこれで切ないような気がしてくる不思議。
しかも、どのキャラクターも想像の1枚も2枚も上を行く変態じみた発言と行動を、でも開けてはいけない危うさを孕んだ心の扉の向こう側をさらけ出すように見せるものだから、変態なのにピュアという謎の感覚に包まれます。正直突っ込みどころだらけの展開なのに、どこか切なさと苦しさを感じる。これはもはや作者の才能としか言いようがない感じです。
話の中では、やっぱりユキと言う存在の描き方が印象的。由紀の創るユキという幻想は、女性への憧れの形ではあっても、それは決して現実の女性を映している訳ではなくて。綺麗なもの、可愛いものあり得ないものに憧れて、自らがそれに近づきたいと願って。
でもそれはユキがどれだけ綺麗になっても、決して叶わない幻想。由紀は自分の欲望に振り回されて周りの人たちを傷つけ、でも最後の一歩は踏み出せない。ユキの姿で亘と会っても、決して亘を癒すことはできない。ユキの姿をして、自分の写真を取って、行き場の無いナルシズムに溺れるだけ。
そんな由紀とその周りの人々がこの先どう変わっていくのか、変わっていけるのかを、楽しみに待っていたいと思います。もちろん、予想の斜め上を行く展開とセリフの数々も楽しみですけど!