クロノ×セクス×コンプレックス 1巻 / 壁井ユカコ

タイムリープにTSに魔法学校に女子寮と美味しい要素がてんこ盛りな一冊。
平凡な少年がひょんなことから魔法学校での生活へと巻き込まれていく話なのですが、その前にまず偶然ぶつかった魔法学校の生徒の女の子と入れ替わってしまったり、そのままなし崩しに通うことになった魔法学校の女子寮でのドキドキ生活が始まったり、そこが時間を扱う魔法の学校なのでタイムリープものが始まったりと、色々な要素がごった煮になった作品。
それだけ詰め込みながらも、ごちゃごちゃしたり不自然になったりしないで、ジュブナイルや児童文学っぽい読み口の綺麗な物語に仕立ててあるのが凄く良かったです。かといって、それぞれの要素が薄くなったりせず、美味しいところは美味しいところのままに楽しめるのも良い感じ。女の子になっちゃったことのドキドキ展開や、繰り広げられる女同士の怖い怖い派閥争い、魔法のワクワク感と表裏一体の恐ろしさが詰まっていました。
物語的には、主人公の朔太郎が女子たちの中でモヤモヤしつつも王子様ポジションを確立していくくだりも面白かったですが、その朔太郎とオリンピアの関係の変化も良かったです。傲慢でわがままで容姿端麗、成績優秀といういけ好かない少女だったオリンピアが、実は家名に負けないように影で決死の努力をする素はうじうじとしたネガティブ少女だったと言うギャップも何だか微笑ましい感じ。
魔法学校であるクロックバードにミムラとして通って一ヶ月になった朔太郎ですが、何かを知っているらしい<永久時間剥奪者>司書の存在、祖父の秘密、朔太郎と入れ替わったミムラの目的と物語はまだ謎だらけ。その謎は魔法学校だけでなく、朔太郎のいた現実にも関わってきそうで、この先の展開も楽しみになる一冊でした。