蒼海ガールズ 1巻 / 白鳥士郎

蒼海ガールズ! (GA文庫)

蒼海ガールズ! (GA文庫)

帝国を追われた皇子が、他国の少女ばかりの戦艦に助けられて……というお話。
突っ込んでは語られないものの、クーデター絡みと思われる事情で近しいものを失い、祖国を追われる巻頭のシーンから重たい物語が始まるのかと思いきや、なんとか逃げおおせて漂流していた皇子を拾ったのがアラミス王国少女艦隊の戦艦だったものだから雰囲気が一変。しかもその皇子シューフェンが女装の似合う可愛い男の子だったために、少女艦隊に女の子として正体を隠すハメになるという驚きの展開。
いきなり艦長に襲われかけたり、同じ班の百合娘にも襲われかけたり、皆からやたらめったら可愛がられたりと、男女比1:200な船上でファンタジーな世界が繰り広げられます。そして気がつけば物凄い勢いでハーレム展開なのに、一番可愛いのがシューフェンな辺りいろいろと間違っているような、むしろ今の時代にはこれが正しい的な、不思議な感じ。
そんな少女だらけの船上で繰り広げられる騒がしく楽しげな航海も、追手のかかったシューフェンとプライベートな理由からそれを庇うことに決めた艦長の船な以上、何事もなくアラミスにたどり着くわけがなく。その正体が露見したことで危うくなるシューフェンの立場、そして襲い来る帝国の艦隊。その中でも、自分たちの思いから自分たちの道を選び、果敢に戦いに挑む少女たちの姿はカッコよかったです。特に終盤の海戦シーンは、専門用語のオンパレードながらもスピード感溢れる展開は映像が目に浮かぶようで、これが本物の海戦であることを感じさせてくれて良かったです。
ただ、中盤の展開などは少しご都合主義っぽすぎるかなという気もします。シューフェンが同盟国のクーデター勢力の渦中の人物である以上、個人的な理由で彼を庇う艦長の判断は外交問題間違いなしなものですし、その判断に好悪の感情だけで皆がついていってしまうのも流石にどうなのかなと。そしてそういう緩さや甘さみたいなものがある反面、海戦シーンは存外にシビアで血と硝煙の匂いに包まれるような感じで描かれていたり、世界設定はきちんと作られているようなのがちょっとアンバランスな感じを受けました。ただ、その辺りのバランスは、むしろこれからシリーズが続く中で取っていくものなのかなという気もします。
キャラクターはそれぞれ魅力的。特に海戦におけるエーレンの大活躍っぷりは素晴らしかったと思います。そして、多少融通は聞かないにせよまともなことを言っているはずなのに、何故か皆の敵役にされてしまうアリル副長が不憫。そんな報われなさになんとなく頑張って欲しいなと思っていたら、何かこの先も幸せにはなれなさそうな感じでますます不憫な感じに……。
そんなこんなありつつ、非常に楽しく読めた一冊でした。この先の展開も気になるので、早めに2巻を買ってこようと思います。