アカイロ/ロマンス 6 舞いて散れ、宵の枯葉 / 藤原祐

「ロマンス」のタイトル通りに、最初から最後まで愛を描いた物語でした。
ついに明かされた真実により急転直下の幕引きとなった前巻を受けて始まる最終巻。様々なものを失い、その手を血に染めて、どん底まで突き落とされた枯葉や景介たち。そんな彼らがもう一度立ち上がれた理由もまた、彼らを奈落へ突き落としたものと同じ愛でした。
絶対に消せない自分の痕を残そうとした秋津依紗子の愛。全てを犠牲にしてでも掴みとろうとした木春の愛。そして、立場も誇りも全て突き崩され、それでも、だからこそお互いを支え共に歩もうとした枯葉の愛。景介を取り巻く想いだけでも色々な形の愛が描かれて、さらに型羽や棗、檻江たちの抱く想い、また他のキャラクターたちの持つ愛、そしてその裏返しの憎しみもあって。
特に印象的だったのは灰原の存在。喪儀という悪趣味としか言いようの無い儀式の先に、枯葉と灰原の二人が見出したもの。灰原と枯葉、その二人に向きあって覚悟を決めた景介。普通に考えたら歪な形で、でもだからこそ寄り添い歩く二人の強さと純粋さが映えるような、綺麗なひとつの愛の形でした。
そして景介。灰原に、枯葉に、姉に、鈴鹿の一族に、そして自分自身に向き合って。枯葉とお互いに支え合いながら、仲間たちと共に助け合いながら、自分の道を進んで。灰原と枯葉との向き合い方、棺奈との関係の決着、からみの枝を使った結末は、一人の人間として鈴鹿の一族という異形と向き合い、その歪みを含めて受け止めて、自ら選び道を歩んでいく器の大きさを感じさせてくれました。
鈴鹿という異形の一族を描いた異能バトル小説であることは確かで、その設定やバトルそのものも魅力のシリーズではありましたが、最期まで読んで、本当にシンプルに様々な愛の形を描いたロマンス小説だったように感じます。そして、その純粋さが素敵な作品でした。