- 作者: 入間人間,左
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2009/12/16
- メディア: 文庫
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とは言っても、当然のごとくまともに探偵の物語が描かれるわけではなく、そこに広がっているのはいつも通りな入間人間の世界。犯罪も殺人も狂気も超能力も、何気ない日常もありふれた幸せも、全てはただそこにあるようにあるだけで特別な重みなんてなくて。何が起きてもそこに深入りはせず、等しく軽い手触りのままに描かれていくのは、諦めからスタートする素晴らしき日々。
短編5章とエピローグからなるこの作品は、ストーリー的には淡々としていてそこに何かを求めて読むと肩透かしをくらうような感じではありますが、この雰囲気というか、ダウナーでシニカルだけどどこか前向きな手触りは相変わらずそれだけで魅力的。何も無いところに生まれた蜃気楼のような温い居心地の良さに、いつまでも浸っていたくなるような一冊でした。