嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 9 始まりの未来は終わり / 入間人間

長瀬透が殺されて、そして、みーくんは。
このシリーズにおいて、まーちゃんはただ壊れている人だけど、みーくんは頑張って壊れようとしている人だという感触はずっと前からあったのですが、そのみーくんの本質が長瀬の死という喪失を通じて一気に溢れ出したかのような第9巻。
普通の生活を続けようとする意識と現実の行動から乖離するかのように、妄念の中に飲み込まれていく地の文は、紙面を真っ黒に塗りつぶすほどの勢いで、ただひたすらに空虚な戯言を吐き続けます。意味のない、ただひたすらに意味のない文字の羅列は、人がショックを受けたときに思考が飛ぶ感覚をそのまま文章にしたかのよう。何も生み出せない言葉を重ねて、ただ思考だけが高速で回転する。そして、その向こう側に飛び飛びに見えてくるのはあまりに痛々しい現実の形。
どうやったらこんな文章をそのまま出力できるのだろうと思うような、現実逃避のための文字列が延々と作品の8割を埋め尽くす中、伝わってくるのはみーくんが遠ざけようとして遠ざけようとしてそれでも遠ざけられない痛み。その切実さに読んでいる方の気持ちもざわざわするような、そんな不安定な小説でした。
自分が壊れないように、自分から壊れようとして、その結果どうしようもない現実逃避を回し続けたみーくんは、でも結局壊れることはできない。だから、彼は結局受け止めなければならなくて、そして自ら壊れることを捨てたときに、天野あいがみーくんとしてまーちゃんと過ごすことで逃げ続けていた何かに対して、どういう答えを見せるのか、あるいは見せないのか。嘘で埋め尽くされた言葉の中で実際には何が起きているのかも含めて、最終巻になるという10巻を心して待ちたいと思います。