氷結鏡界のエデン 2 禁断水晶 / 細音啓

護士候補生として天結宮に戻ったシェルティスの姿を描いた第2巻。
候補生となったシェルティスが千年獅になるために自分に足りないものを、同じく候補生でかつて巫女見習いだった少女モニカとの関係を通じて学んでいくようなお話。自分のことばかり見ていた視野の狭さに、仲間との共闘を通じてシェルティスが気付いていくというドラマと、かつて挫折を味わった少女が、昔憧れた少年の姿と、今隣にいる少年の力を借りて新しい扉を開いていくドラマが、それぞれがそれぞれの思いを抱えて組んだチームの繋がりから描かれていて良かったです。基本的にはシェルティスとユミィの物語なシリーズだと思うのですが、他のキャラクターにもそれぞれに胸に秘めた想いがあるというのが素敵。
そして物語の謎の部分も少しづつ見えてきた感じ。天結宮とは別の組織、そして浮島にあった謎の施設とそこで見つけたもの、謎の人物であるツァリの存在、シェルティスに宿った魔笛。いかにもシリーズの序盤らしい情報が小出しになってくる感じで、それぞれが繋がりそうで、でもまだピースが足りなくていろいろ推測をしたくなるようなワクワク感がありました。
あと、作品自体には関係のないことなのですが、個人的にこのシリーズ、SFCのFF的なドットグラフィックRPGの映像で脳内イメージ化されてなりません。天結宮から飛空挺に乗ってダンジョンへ! 謎の建物の周りを歩いていたらイベント発生で隠し扉が! 二手に分かれた片方のパーティーの操作でもう一方の前に隠し通路が!という諸々が非常にRPG的に感じて、気がつくともうすべてがドット絵のイベントシーンで脳内再生されてしまう不思議。
そしてそう考えると、何故か自然に出てくるエリエ&ユトや、意外に普通に会えているユミィとシェルティスの関係も、ゲーム的なノリならありだと思ったり、モニカとシェルティスの浮島での会話のシーンがセーブポイントで休憩を取ったら何か重要なイベント始まった! と思えてしまったりと読んでいていろいろ妙なことに。こういう楽しみ方が良いのかは置いておいて、個人的にはそんな部分の面白さもあるシリーズになってきました。