アリス イン ワンダーランド

ティム・バートンのアリス イン ワンダーランドというのがまさしくな感じの映画。とても良かったです。こういうイマジネーションは大好き。
アリスのワンダーランドと言うとディズニーアニメーションの印象が強いからか、パステルカラーのファンタジックワールドと言うイメージが有ったのですが、この映画で描かれるアンダーランド(=ワンダーランド)はもっとずっと陰鬱で奇妙でトリップ感のあるマジカルワールド。19歳になったアリスが人生の選択肢を突きつけられ、逃げ出した先で再び迷い込んだこの世界は、優しく楽しい夢の国ではなく、狂気と闘いに満ちた悪夢的な世界です。
ただ、その悪夢的イメージの中にも、楽しくファンタジックな要素の見え隠れしたりするバランス感覚が絶妙な感じ。どのキャラクターも良い意味でも悪い意味でもマトモじゃなくて、白の女王と赤の女王の対決という話にしても、シンプルな善と悪の対立というには悪趣味過ぎる背景が見え隠れ。でもその混沌とした世界を魅力的に描く辺りはさすがだと思いました。
CGアニメーションと実写の融合に3Dまで使って表現されたアンダーランドの映像は、まさに自然すぎるのが不自然という感じ。当たり前に広がるアンダーワールドの光景も、大きくなったり小さくなったりするアリスも、よくよく考えればどうやって撮影しているんだろうと思うようなシーンばかりで、すごく見えないことが逆にすごいと思います。
キャラクターではジョニー・デップのマッドハッターの狂いっぷりも良かったですが、印象的だったのは赤の女王と白の女王。悪として配置される赤の女王が、自分勝手な愛情を求め、無理矢理に自らに目を向けさせようとして破滅する、愚かだけれど人間臭いキャラクターであるのに対して、善として配置される白の女王の偽善者ぶりの凄まじいこと。美しい外見と柔らかい物腰で魅了し、自らは手を汚さず、そのくせに闘いは厭わないあたり、死体の山の上で愛と平和を叫びそうな感じがして、個人的には赤の女王よりもむしろ人間離れした恐ろしい存在に見えました。でも、そういう善悪対立だけではない歪みを含めてこの映画の魅力なのかなと。
そして19歳として描かれるアリスの闘う女の子っぷりも良かったです。現実での選択から逃げ出した先のアンダーランドでも突きつけられる大きな選択。アンダーランドの住人たちとの関わりを通じ、自ら踏み出すことで状況を打開し、そして最終的な決意を決め一歩を踏み出す。小さな女の子が不思議な国に迷い込むだけだはない、この映画の魅力の多くがそこにあるのかなと思いました。ミア・ワシコウスカのアリスの一見清楚で可愛いんだけれど、心が強くてカッコいいところはとても素敵だと思います。
そんな感じで映像も脚本も良くできていて、ちょっとアクの強いエンターテイメント作品として満足度の高い映画でした。個人的にはこの世界観や物語自体がとても好みだったこともあって、非常に楽しめました。DVDも欲しい!
蛇足ですが、パッと見で気色悪いチェシャ猫が動くとどうしてこんなに可愛いのか!