クロノ×セクス×コンプレックス 3 / 壁井ユカコ

世界の崩壊を防ぐために時間を管理すること。その意味が朔太郎に重くのしかかる第3巻。
自分の世界に帰ったはずの朔太郎が見てきた世界。中身がミムラの三村が暮らし、小町の「居ない」その世界に打ちひしがれてクロックバードに戻ってきた朔太郎が、小町のために動き出す物語、なのですがその姿が痛々しくて読むのが辛いです。
世界は簡単に書き換えられる。そして小町はどこにもいなくなり、自分しか知らない。自分があの幼なじみを救ってやらなければいけない。そう思い詰める朔太郎は、クロックバードに戻ってからも周りを遠ざけたりどこか上の空だったり。そんな朔太郎の助けになろうとするのがあのオリンピアなのですが、彼女の歩み寄りや気遣いに対しても朔太郎の心の中は小町のことばかり。情緒不安定でオリンピアにきつく当たり、さらにはあることを知って彼女を遠ざけようとする朔太郎と、初めてできた友達を失うまいと頑張るオリンピアの姿は不憫で痛ましくて見ているのがキツいです。
小町の謎、ミムラの謎といったことが明かされてきて、大きく動き出した物語。ただ、その展開が緊張感のあるものだけに、今までこのシリーズの魅力だったドキドキワクワク感は少し弱くなっているかなという気もします。今回もミムラと三村の美味しいシチュエーションがあったり、白亜紀と接続したことで学園がジュラシックパークになったり、オリンピアが2人になったりという展開はあるものの、朔太郎がそれどころではないので、読んでいる方もどこかそれどころではないような感じになってしまうのがちょっと残念かなとも思いました。
1人の少女よりも世界の崩壊を救う〈単一時間管理局〉に抗う朔太郎は、視野が狭くなってあとはもう引き返せないところまで突き進むだけに見えます。そしてほぼ明らかになる司書の正体は、その行き先の暗さを強調しているかのよう。それでも、まだ確定していない未来に向かって、彼ら彼女らが幸せを掴めることを願うばかりです。そしてそのために、聡明で子供っぽくて不器用で人付き合いの苦手なオリンピアという少女が、初めての友だちのために正しく頑張れることを、ただただ応援していたいなと思いました。