ビリオネアガール 1 / 支倉凍砂・桂明日香

ビリオネアガール(1) (アフタヌーンKC)

ビリオネアガール(1) (アフタヌーンKC)

冴えない大学生活をおくっていた高遠恵が親戚の教授から依頼された家庭教師のバイト。その開いてはデイトレードで170億円の資産を持つ少女で……という物語。これはとても面白かったです。
名実ともに億万長者である少女藤岡紫ですが、パッと見はもっさい感じの普通の女の子。ただ、その普通ではない立場から、両親とも離れ友達もおらず普通な生活を送れなくなっている彼女は、ようやく見つけた信頼できる人間である恵に頼ろうとします。物語は、ちょっとしたことでテンパったり照れたりする紫と恵の関係を中心に描いていくような感じです。
垢抜けない純情な少女の顔と、数分で何億円を動かすデイトレーダーとしての顔。そんな彼女の素顔に触れても、元々ののんびりした性格故か自然に彼女に対して接してくる恵に対して、紫が過剰なまでにこだわろうとするのはある種当然なこと。世間擦れしていない純朴さと、金銭感覚の飛び方、そして何より周りに信頼できる友人も家族もほとんどいないことから来る紫の不安定さは、純粋で可愛くもありますが、それ以上に危うい部分もある感じで、放っておけない子という印象です。
それ故に恵も紫の力になろうとしているのだと思いますが、それにしてもちょっとこの関係は歪かなと思うところもあったり。藁にもすがるような想いで恵を掴もうとして、「お金ならある」とまで言ってしまう紫は、きっと恵が少し望めば何でも差し出してしまいそうで、でもそれは結局一方的な、あるいは共依存の関係にしかならない訳で。それはそれで魅力的な関係ではありますが、個人的にこの物語には、そういう閉じた関係を見せて欲しくはないなと思います。可愛くて可哀想な女の子を狭い世界の中で救うだけの物語ではなくて、紫にはもっと広い世界を見て感じて、その上で自らの手で未来を選んでほしいと思うのです。そしてその時に、恵が隣にいれば素敵だなと。
億万長者であるという揺るがない事実、世間との価値観のズレ、そしてそこまでしてデイトレードにこだわる訳。1巻はまだ二人の出会いといったところで、少しづつ変わっていこうとする彼女とそれを助けようとする彼の前には、まだ明かされていないものも含めてそう考えるだけでもたくさんの困難があるように思います。でも、彼女は彼女らしく、彼は彼らしいままに、幸せな未来を掴んでいけると良いなと思いました。
余談ですが、キャラクター配置もキャッチーな設定も凄くドラマ向きだと思うので、この作品そのうちドラマ化しないかなと。私が凄く見てみたいだけですが!