2010年の10作(小説)

年が明けて早2日目となっていますが、2010年の振り返りとして印象に残っている本10作品選んでみようと思います。
ちなみに2010年の読了数は115冊。私としてはとてもよく読んだつもりですが、ついったーのTLに500冊とか1000冊とか言っている人たちがいるのでなんだか申し訳ない気分になる不思議。


ハーモニー / 伊藤計劃

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

伊藤計劃作品は2010年に文庫化されたので手にとったのですが、特にこの小説は凄かったです。ひとつずつ小さな考察をひたすらに積み上げて、圧倒的なスケールで描き出したユートピアの臨界点。これは本当にとんでもない小説だったなぁと。
感想


猫物語(白) / 西尾維新

猫物語 (白) (講談社BOX)

猫物語 (白) (講談社BOX)

聖人君子のようでどこか歪みを持っていた羽川翼というキャラクターを、一度ばらばらにして、もう一度始めるための物語。化物語シリーズは正直そろそろ辛いかなと思っていたところもあったのですが、読むのをやめないで本当に良かったと思いました。西尾維新作品の中でも個人的にはかなり上位です。
感想


なれる! SE 1〜2 / 夏海公司

なれる!SE 2週間でわかる?SE入門 (電撃文庫)

なれる!SE 2週間でわかる?SE入門 (電撃文庫)

まさかのSEお仕事もの。うっかり下請けSIブラック企業に入社してしまった主人公が、中学生くらいにしか見えない上司とか周りの人に振り回されつつ頑張る話、なのですがIT系の業界にいる人ならなんとなく想像のつくシチュエーションの連発に引きつり笑いが出ることうけあい。そしてこの作品、SE(というかNEですが)話をラノベのフォーマットにきっちりとまとめてくる辺りはさりげなく上手いと思います。
感想:1巻2巻


ぐいぐいジョーはもういない / 樺薫

ぐいぐいジョーはもういない (講談社BOX)

ぐいぐいジョーはもういない (講談社BOX)

高校女子硬式野球を舞台に、9回裏2アウト完全試合を目前にして始まる物語。バッテリー2人の関係、時の流れの中で揺れる想い、そして目の覚めるような高速スライダー。身も蓋もなく言えば、野球で百合で青春なのですが、そんな言葉でまとめたくないくらいに素晴らしい一冊でした。
感想


下妻物語・完 / 嶽本野ばら

下妻物語の続編にして完結編。ロリータな桃子の、誰に何を言われてもお好きにどうぞと言わんばかりの、わがままに自然体に、自分が好きなもの、自分が信じたものは揺らがないスタイルに憧れます。そんな桃子なのに、やっていることはベタな友情モノで成長モノだったりするのもツボ。桃子とイチゴの関係、ラストシーンには思わず涙しました。本当に大好きな一冊です。
感想


空色パンデミック 1〜3、Short Stories / 本田誠

空色パンデミック1 (ファミ通文庫)

空色パンデミック1 (ファミ通文庫)

痛々しくて、面白くて、時々ぞっとさせられる「空想病」という設定の巧妙さ。1〜3巻は、どこまでが真実かわからない、次の瞬間底が抜けるかもしれないセカイの中で、キミとボクがそれでもそこに意味を探すような物語でした。この先、この物語の中で何を語るのかにも期待しています。
感想:1巻2巻3巻Short Stories


六百六十円の事情 / 入間人間

六百六十円の事情 (メディアワークス文庫)

六百六十円の事情 (メディアワークス文庫)

街のSNSに寄せられたカツ丼についての書き込み。そこから繋がる9人の物語は、大きなことは何も起こらない、それでも本人たちにとってはなにより特別なもの。小さな迷いと行動を積み重ねて、思いも掛けないところで影響しあって、そうやって過ごしていく素晴らしき日常。入間人間の青春ものは好きだと改めて実感した一冊でした。
それと入間作品では、「電波女と青春男」の6巻でのエリオの踏み出した一歩と、それを受けての7巻も素晴らしかったです。
感想


円環少女 11〜12 / 長谷敏司

このシリーズは毎年あげている気もしますが、それでもあげないわけには。どんどん大きくなるスケールも、作中に渦巻いた感情も、一切減速させずに、ただ限界へと突き進んでいくようなクライマックス。まさに壮絶の一言。完結がほ本当に楽しみなシリーズです。
感想:11巻12巻


小さな魔女と空飛ぶ狐 / 南井大介

小さな魔女と空飛ぶ狐 (電撃文庫)

小さな魔女と空飛ぶ狐 (電撃文庫)

わがままで子供っぽい天才科学者の少女。戦争の時代に、そこに彼女が才能を注ぎ込むことの意味。ある種の御伽話として語れるそれは、特異な才能をもって生まれたものが、自らと向き合い、世界と向き合う、覚悟の物語でした。そして、そんな小さな魔女の姿はとても素敵に思いました。
感想


アンチ・マジカル / 伊藤ヒロ

アンチ・マジカル ~魔法少女禁止法~ (一迅社文庫)

アンチ・マジカル ~魔法少女禁止法~ (一迅社文庫)

パステルカラーの世界の向こう側に、灰色のリアリティを。魔法少女にありったけの愛情を込めてぶっ壊す、そんな作品。元ネタとなっているウォッチメンは観ていないのですが、それでも楽しく読めました。突き放したような文体で語られる、愛のある悪趣味が好きです。
感想



次点は完成度で言えば「マルドゥック・スクランブル 完全版」、好みで言えば「ささみさん@がんばらない」「煉獄姫」あたりが。
改めて振り返ってみると、10冊に絞るのが難しいくらい面白い本にたくさん出会えて良かったです。今年はラノベ以外も含めて色々と読んでいきたいなと思います。