絶園のテンペスト 3 / 城平京・左有秀・彩崎廉

絶園のテンペスト 3 (ガンガンコミックス)

絶園のテンペスト 3 (ガンガンコミックス)

絶園の樹と陸空軍の特撮怪獣もの的なバトルにフロイライン山本と鎖部夏村の超人バトルが続く中で、鎖部左門と葉風、真広に吉野、それぞれの思惑を抱えて繰り広げられるのは論理戦。この奇妙なアンバランスさが「ヴァンパイア十字界」にも通じる城平作品らしさかなと思いつつも、屁理屈じみた論理戦が面白い一冊。
吉野たちの闘いは言ってしまえばそれぞれがそれぞれの計画と思惑、そして使えるカードを持って自分のゴールに辿り着くための論戦をしているだけ。動きすらほとんど無いというある意味すごい一冊なのですが、根拠はなかろうと相手を引っ掛けるために振りかざす論理、それに対する対応といったところは読み応えのあるもの。葉風を捕える2年の時間の檻、それを破るための吉野の企て、そしてそれぞれの抱えた思惑に殺された愛花と犯人の存在。
噛み合いそうで噛み合わないそれぞれの要素がひとまずの結論を見せるのかと思った瞬間、見えてくるのはもっと高次元の事象。伏せられた情報を明らかにすることで、今まで見えていた盤面の図を一気に塗り替えるのは作者の十八番ではありますが、まさか一気にここまでスケールが上がるとは思いませんでした。副題の「The Civilization Blaster」はそういうことかと思わせる、はじまりの樹と絶園の樹の意味にはびっくり。
これまでの作品でも序盤に開示される情報が絞られているためスロースターター気味だった原作者の傾向からすれば、ここから物語は一気に予想外の方向へ加速するはず。そういう意味でいよいよ先が読めなく、楽しみになってきた3巻でした。