純真ミラクル100% vol.5 / 秋★枝

純真ミラクル100% (5) (まんがタイムKRコミックス エールシリーズ)

純真ミラクル100% (5) (まんがタイムKRコミックス エールシリーズ)

モクソンの移籍問題、オフィスTの運命、所長と工藤の恋の行方。何もかもがシンプルに上手くいかく訳ではなくて、それでもハッピーエンドを迎えたことが嬉しかった最終巻。
末澤による手段を選ばないモクソン引き抜きに、新アルバムのセールス不調が重なって、事務所自体もモクソン自身も落ち込みそうなところを、なんとか前向きに進んでいこうとする人たちの強さと優しさを感じる一冊でした。
そんな中でもフォーカスが当たっていたのは大人たち。仕事なのだから当然のごとくシビアで、しかも舞台は食うか食われるかの芸能の世界。そんな世界の中でも頑張る大人たちの格好良さが印象的。弱さを見せることも迷うことも当然あって、それでも支え合いながら自分にできることに前向きに取り組んでいく。ドロドロギスギスしそうな話なのに暗い印象にならないのは、きっとそんな前向きさのおかげ。高杉所長も工藤も末澤も他の人たちも、仕事であれば手段を選ばないことはあっても、ここに決して悪い人間はいないのだと感じます。
特に、モクソンが音楽に専念できるように、そして真っ直ぐ歩んで行けるように振舞うそれぞれの姿は本当に格好良かったです。落ち込むモクソンにかけた二宮の言葉、次のステップに送り出すための所長の言葉、素敵でした。
そして、工藤たちの恋の行方。もどかしいその関係も、幸せの方向に一歩歩み出すような結末へ。この作品は仕事の話と人間関係がシームレスというか、ある種公私混同気味なお話だったと思うのですが、彼ら彼女らの関係があったからこそこうやって前向きな方向に進むことができたと思うと、そういうのも悪くないかなと。誰かのために頑張れて、誰かの支えになってあげられる。単純だけど大事なことだと思います。
そして物語の中心にいたのはやはりモクソン。この巻では直接彼女自身が描かれることは多くはないのですが、彼女がいたからこそ周りの人たちはこういう気持ちになって、この物語は動いていったのだと感じました。結末はちょっと都合の良すぎるところもありますが、裏表のない真っ直ぐさを殺さない環境が彼女に許されて良かったなと思います。
ラストの展開はちょっと駆け足気味で、もう少しゆっくり描いて欲しかったかなというとことが唯一残念ではありましたが、素敵な結末を迎えたシリーズになりました。読み終わった後に、これからの彼ら彼女らの行く道に幸せが多くあることを自然と願えるような、優しい作品。面白かったです。