僕たちは監視されている ch.2 / 里田和登

僕たちは監視されている ch.2 (このライトノベルがすごい!文庫)

僕たちは監視されている ch.2 (このライトノベルがすごい!文庫)

「みんなリスクを背負って、歪んだ時代を生きている」
(中略)
「だったらせめて、わたしもみんなと一緒に歪みたいの」

「情報」を執拗に求める病気、IPI症候群。その患者に対して自らの生活を映像配信により公開することで、症状に対する対処療法とするクローラとコンテンツの関係。この2巻は、患者と治療者という交わらない一線の上に、微かな光を見せるような物語でした。
ユイガが学校でも全てを配信するコンテンツであるが故に傷つけてしまった夕菜という少女。そんな彼女と何とかして向き合うべく努力を重ねるユイガと、そんな彼女との交流を深める祭たち。IPI症候群、コンテンツとクローラ、新宿の猥雑な街、女装少年のコンテンツ。
歪みに歪んだ、静かに狂った世界の中で紡がれていく少年少女たちの物語は、触れれば壊れそうで、でもどこか強かな感じもするような、掴みどころのないもの。透明な狂気の上で揺らぐ、手を伸ばしたら消えてしまいそうな儚さはこの作品独特だと思います。ごく普通なようで、全然普通ではないような日常。正直、読んでいて彼ら彼女らの言動も行動も全てがバラバラなように見えて、私には全然理解はできないのですが、そこに感じる綺麗なものと汚いものが混じり合ったような感覚が面白かったです。
そして、話はクローラの物語へ。情報への執着。今はWebで何もかもが調べられるようになった、ググれば何でも知ることができる時代。メルマガ、RSSと情報を追いかける手段は進化し続けて、いつの間にか情報を追いかけることに追われているような感覚は、ネットにハマったことがある人なら分かるものだと思います。それが今生まれてきた、ニコ生やustのようなプライベートを配信するという情報の在り方と繋がって、さらにあと一歩半踏み外したところにあるような怖さ。今現在のリアルから想像できる話だから、クローラの独白には何かがこめられているような切実さを感じるし、そこに恐怖も感じるのだと思います。
そんな歪みは、クローラとコンテンツという関係、出会ってしまった二人、クローラの求めたものという要素を重ねて、ひとつの結末に。あり得ない、あり得てはいけないところに繋がった想いは、歪みきった世界の上に微かに光が揺れたような感触で、この救われない物語の中に、とても美しいものを感じさせてくれたように思いました。すごく素敵な作品だったと思います。