煉獄姫 二幕 / 藤原祐

煉獄姫 ニ幕 (電撃文庫)

煉獄姫 ニ幕 (電撃文庫)

今後のシリーズにおいて重要な意味を持つだろうキャラクターが何人か登場した煉獄姫2巻目。そういう意味では、この先に向けての準備的な意味合いを感じる一冊ではありましたが、そこは作者らしく悪趣味で真っ直ぐな物語がありました。
イパーシがトリエラに抱いていた純粋な想い。それが様々な人々の介入によって、彼を怪物に変えてしまったこと。悲劇が連鎖していくことを感じさせる、ラストの展開。お互いを護るためだけに愛情を注ぎ合うようなアルトとフォグの関係も、自分を壊すことで他人も壊していくようなキリエの行動も、真っ直ぐすぎるが故に歪んでいるようで、読んでいて危うさを感じます。
中でも、記憶を共有した複数のキリエたちであり、それをもってキリエという人物でもあるという群体のキリエのキャラクターは強烈。いくらでも代わりがいることでいとも簡単に自分自身を壊し、それでも一人のキリエの死は死であることに変わりはない。目的のためというよりも、進んで自らを壊していくようにも見える彼女の姿は、孤独に焼かれて自分自身と一緒に他人も壊していくようで、痛ましさを感じるものでした。ただ、個人的にはこういうキャラクターは好きだったり。
あとは、老齢の執事にして、国で有数の騎士であるというカルブルックの格好良さが素敵でした。精神は老成しながら姿はずっと少女のままというレキュリィに仕えるという組み合わせもまたぐっとくるものがありました。
煉禁術とホムンクルスたち。秘匿されたアルトという煉獄姫。暗躍するユヴィオール。彼ら彼女らがこれから何をしてどうなっていくのか、この先の展開が不安でもあり、楽しみでもあるシリーズです。