アイドライジング! 2 / 広沢サカキ

アイドライジング!〈2〉 (電撃文庫)

アイドライジング!〈2〉 (電撃文庫)

『行けモモっ!』
 追い詰められていたモモの頭に、割って入るような鮮烈な声。
『勝つんだろっ!』

アイドルたちがバトルドレスに身を包み闘うアイドライジングという競技。その世界に飛び込んだ新人アイドルのモモとオリンの二人を中心に描かれる第2巻は終盤60ページが素晴らしかったです。まさに努力・友情・勝利、そして百合!
ニライカナイで新しい高校生活を始めたモモとオリンがクラスメイトになるというお約束展開から、オリンと仲良くなろうとするモモと、それをうざったがるオリンという日常の話。そして、タッグマッチに選ばれたモモとオリンが、コンビネーションがバラバラのままタッグ戦の名手であるユウゼンジ姉妹に惨敗するという感じの話が中盤まで。
パステルピンクで彩られたようなアイドルたちの日常、そして彼女たちの舞台となるアイドライジング。とにもかくにもマイナスのもののない、全てがプラスのもので埋め尽くされたようなキラキラした世界は、あまりに眩しくてなんだか読んでいてあてられそうな感じ。ツンツンした態度を取って練習にもろくに付き合わないオリンに、直情バカ系なモモが考えなしの一直線で突っ込んでいくような関係も、やたらと胸を強調する描写やモモのセクハラっぷりも、さすがにちょっと辛いかなと思いつつ読んでいました。お泊りイベントとか、美味しいけどさすがにあざとすぎるんじゃないかなと。
ただ、途中までのそんな印象を吹き飛ばしてくれたのが終盤の展開。ユウゼンジ姉妹へのリベンジ戦。それに向けて燃えていたオリンの理由と、その心を折った出来事。それが何かはよく分かってなくても、バカだからこそできたモモの向こう見ずな行動。それが、オリンの心に届いたから、二人の間に信頼の絆が結ばれる。ロケット周りのくだりはそうくるかという感じでずるいくらいで、そこからなだれ込むように突入したリベンジ戦はもう! 友情と信頼。あれほど上手く行かなかった二人に確かに生まれつつあるそれが、目の前の強大な敵に立ち向かう力となる。そして決着の時まで、ド王道でもうこれ以上ないという物を見せてくれたと思います。美味しい要素てんこ盛り。306ページのイラストの素晴らしさといったら!
アイドルに学園にプロレス的なショー要素があって、女の子がきゃっきゃしてたり、かと思えばきつい特訓に明け暮れたり。これは、ちょっと古さを感じるくらいな少年漫画の王道を全員女の子でやるという路線を、ある意味突き詰めたような作品なのだと思います。個人的には、性格が悪いようで実のところ良い子なオリンが好きなので、モモとの関係では良いツンデレがおちる瞬間を見せてもらえました。ライバルと書いて親友と読みそうなこの二人の関係がこの先どうなっていくのか。走り始めたばかりのアイドルの道の先に何が待っているのか。続刊も楽しみになる一冊でした。面白かったです。