パーフェクトフレンド / 野崎まど

やっていることはいつもの野崎まど作品といえるのですが、ひねった展開もシュールな小ネタも含めて、作品全体としてあるべきものがあるべきところにハマっているという感じがする一冊でした。これはとても面白かったです。
小学4年生の少女、周りの子達より少し頭の良い理桜が出会ったさなかという少女。大学まで出ている所謂天才数学者な彼女を小学校へ連れて出るために「ともだち」の大切さを語ったら、「ともだち」を知るために学校に出てきたさなかに振り回されることに、という展開。
小学4年生には思えない少女たちの日常や掛け合いの描写と、そこに差し込まれるおおよそ本編とは関係ないシュールな小ネタがなかなか面白くて、序盤から脱力しながら読むような感じ。そして奇行に走るさなかとツッコミを入れる理桜という、きらら4コマ的日常が続くのかと思った矢先からの展開は作者らしいものでした。
「分からないもの」を中心においてそこに近づこうとする話というのは野崎作品のひとつのパターンだと思うのですが、この作品の場合理桜からすれば天才であるさなかがそれにあたって、さなかが友達を数式で解明しようとする辺りの印象はまさに気持ち悪さ含めてこれぞという感じ。ただ、ここからの展開が予想を上回ってくる感じでとても良かったです。
全てを論理で解き明かそうとしたさなかは、理桜の持つ「一般的」感覚からすれば多いなる謎なわけですが、さなかからするとそれでも割り切れないのに存在する友達という概念は謎なわけで。このあたり、作品の構造が唐突すぎてあっけにとられるばかりな展開と共に反転します。そしてそこからの斜め上かと思っていたら、遙か彼方でそんなもの見えるか的超展開が始まり、論理を超越する概念という何でもあり感を漂わせて収束したような投げっぱなしなような結末を迎える辺り、人をくった話を書く作家らしくて、ある意味とても面白かったです。
作品としての友達というものの扱い方、さなかの語るマクロな現象としての友達というものも興味深く、少女たちの友情物語としても面白く読めるような気がしなくもないけれど騙されているような気がしなくもなく、もしかしたら仕掛けのタネにしたかっただけなのかもしれないという一抹の疑問すら浮かぶような、大変楽しく読める一冊だったと思います。
そんな爽やかに捻くれた話でした。ああ素晴らしきかな友情!