ようこそ、古城ホテルへ 〜湖のほとりの少女たち〜 / 紅玉いづき

魔山を追放された魔女、軍法会議によって軍を追われた軍人、とある稼業から足を洗った娘、処刑されるはずだった亡国の姫君。居場所を失った4人の少女たちが、呼び寄せられた古城ホテルで女主人を目指す物語。
古城ホテル「マルグリッド」で女主人を目指す4人はそれぞれに我が強くて、けれどてんで未熟で、それぞれ与えられた塔に来たお客様も怒らせたり不安がらせたり。その上、お互いにライバルとして対抗意識は強くて、仲良くすることもできず。けれど、ある古城ホテルを襲った出来事から、4人は協力してお客様をもてなそうと精一杯の頑張りを見せます。その頑張りはけれど、今の女主人のところには届かなくて、それでも彼女たちは諦めなくて。
生まれもばらばらで、背負ってきたものも境遇も違って、ただ居場所を失ったことだけが共通する少女たち。性格的にも一筋縄ではいかない彼女たちは、どんなことがあってもくじけないで一生懸命で。そんな彼女たちを見守る物語の視線の優しさがこの作品の魅力なのかなと思います。
追いつめられて、思い悩んでもおかしくない状況にあっても、どこか前向きで自分らしくある彼女たち。そんな彼女たちが彼女たちなりに求めた自分の居場所。そしてその居場所で、誰かが一緒にいるということ。そんな彼女たちの描く足取りを、柔らかく、暖かく見守っていくような、そんな優しい気持ちになれると同時に、居場所があること、仲間がいることのかけがえなさというものを強く感じて、どこか読んでいると気持ちが楽になるような作品でした。
色々な人が手に取る作品だろうと思いますが、作者初の児童書として出版された作品になりますし、この優しい物語はやっぱり児童書を読むような年代の子供たちのところにいちばんに届けばいいなと思います。そんな、素敵なお話でした。