パンツブレイカー / 神尾丈治

パンツブレイカー (一迅社文庫)

パンツブレイカー (一迅社文庫)

半径2メートルに近づいた人間のパンツと(それに類するもの)だけを消し去る異能「パンツブレイカー」というどこからどう考えても出オチな設定を引っさげて始まる一冊。
なのですが、作品の中身はエンタメ的なツボを抑えつつ意外に真面目に展開します。そして一発ネタかと思いきや、普通に面白いというこの不思議さ。面白かったのにどこか納得できない感覚が残る小説でした。
近づいた女の子のスカートの下が光ってパンツが消えるって小学生の妄想かよ的な能力なのですが、実際小学生の妄想が発端なので突っ込み辛く、兄の世話をする妹が兄に近づく度にパンツを脱ぐのも合理的といわれればそんな気もしてくるこのもやもや感。ただのお色気的に都合の良い能力かと思わせておいて、実際そういうノーパンの大安売り的サービスシーンも満載ではあるのですが、主人公にはそんな能力で人から疎まれ、避けられ、あまつさえ両親に捨てられる形で能力者たちの学園にやってきたという過去もあり、それが故に自分で自分をネタにするように作っている中二的キャラがあったりもする訳で。
そんな感じでパンツを消すという能力に真面目に向き合うこの作品では、そんな兄のために転校を繰り返す中で、兄の世話をすることだけに自分を捧げた妹がいたり、主人公のギフトに対して真剣に向き合う美少女研究者がいたり、主人公に対して近い距離感で接するクラスメイトがいたりもします。そしてその中で、もう少しで恋愛に届きそうな要素もあり、能力としては凄いものであることが分かっての燃える展開もあり、キャラクターの可愛さ的な要素もありと、エンタメとして綺麗にまとまった作品でした。
そこまでの流れでシリアスな展開を匂わせておいて、一番のクライマックスで実に頭悪く突き抜けた馬鹿らしさといい、出オチ感満載のネタをちゃんと消化して、抑えるところを抑えながらうまく料理した一冊だったと思います。読み終えてみれば、なんだかんだで面白かったという!