外天楼 / 石黒正数

外天楼 (KCデラックス)

外天楼 (KCデラックス)

外天楼と呼ばれる集合住宅にまつわる人々。描かれるのは、エロ本を拾った少年たちの話、宇宙刑事と悪の女幹部への殺人嫌疑、ロボットの暴走に新米刑事の暴走。それぞれにミステリ的な仕掛けがあって面白い発想だなと思ってはいたものの、互いには全然関係のない話に思われたそれらが、途中からぐぐっと一本の話にまとまっていく辺りの構成が良かったです。そして浮かび上がる外天楼に隠されていたある真実。ロボットと人工生命というSF的なテーマをかすめつつ、謎を解き明かしていく刑事モノのような部分もありつつ、シリアスなのにどこかシュールな感触のまま物語はラストまで。
この捉えどころのなさはあまり好みではなくて楽しみきれたとは言い難いのですが、それでも不思議な読み味のあるマンガでした。彼と彼女はそもそも生まれてきたことが間違っていたのか、そうではないのならどこからがおかしかったのか。この奇妙な建物の中で起きた奇妙な事件は、いったい何がどう狂っていたのか、読み終わった後に分からなくなってしまうような、そんな作品でした。