- 作者: 泉和良,huke
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/12/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ネット上にゲームを始めとする作品を生み出し続け、いつしか小説家としてもデビューをした、クリエイターであるジスカルド。実際にそういった活動を行い、ジスカルドと名乗ってきた作者自身の経験や考えが色濃く反映されたような、自分自身と創作を見つめ直すような色合いの作品でした。
そしてその根本は、帯にも書かれているじすさんのセリフに集約されるのかなと。
「創造の意味と、人の幸せは似てる。一人では意味がない。誰かと分かち合いたいんだ」
クリエイターが何故作品を生み出すのか、そしてそれが届かない時に感じる孤独。じすさんのファンである主人公デイジーの視点から描かれる物語は、じすさんの作品のキャラクターが具現化するという大きな動きを伴いつつも、あくまでも創造者とファンの物語になっていました。誰かのために、分かち合うためにつくられる作品。だからなのか、この物語は狭く狭く、じすさんと彼に近いファンの間で、じすさんに何が起きたのか彼を絶望から救えるのかという展開をします。
個人的には、そのどこまでもプラベートなのに、他者を必要とする創作というものの在り方がいまいち理解できなかったところがあります。そして、弱さを見せるクリエイターと彼を必死に救おうとするファンという美しい構図が極端なまでに閉じた内輪の中で展開していくことに、なんとも言えない気持ちの悪さを感じたところも。けれど、じゃあ創作とは何のためのものかと問われれば自分の中に明確な答えがあるわけではなく、それを考えるきっかけになるような作品であったことは確かなのかなと。
そういう意味では、彼の生み出したキャラクターが現実の世界に確かに与えた影響、具現化したキャラクターが破壊した公園のような公共の場というものと、彼が去った後の繋がっていく続いていく創造の在り方に、ただ閉じるだけでない何かを祈ることができるような気がするのでした。