氷菓 / 米澤穂信

氷菓 (角川文庫)

氷菓 (角川文庫)

アニメ化と聞いて! という訳で古典部シリーズ第一作を読んでみました。
省エネを信条とする少年折木奉太郎が、姉からの依頼もあって部の存続のために入った古典部で好奇心の権化であるお嬢様千反田えると出会って、というお話。そこに奉太郎の友人も加わって、描かれるのは彼ら彼女らの日常と、その中に潜むちょっとした謎。好奇心旺盛で「私、気になります」の言葉で謎を追いかけ始めるえると、省エネと言いながらなんだかんだで探偵役になる奉太郎のコンビが良い感じでした。なんだかんだ言いながらも、だんだんとこの部活に前向きになっていく奉太郎の変化も王道な感じでまた良かったです。
描かれる謎はほんの些細なことから、一冊を通じて謎となる古典部の過去「氷菓」という部誌の謎、そしてえるの伯父が学校を追われた理由というところ。謎が溶けた時にちょっとだけ苦味を残しながら、でもすっきりとした読後感のあるもので、ちょっと良いものを読んだという感じ。
ただ、そのあたりでちょっと引っかかるものがないと言うか、どことなく薄味な感じも。日常ミステリなのだからあまりそこを望むものではないとは思いつつも、もう少し盛り上がりがあればなとも思います。面白いのだけれど、謎的にもキャラクター的にも、あと少しどこか物足りないかなと思うところのある一冊でした。