マホロミ 1 / 冬目景

マホロミ 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

古い建築物への作者の愛が溢れる一冊。
建築家の大学生土神が建築家だった祖父の家に移り住んで、古い建物の解体現場でドアノブに触れた途端に見てしまった光景、そして出会うミステリアスな少女。建物の記憶を見ることができる土神と、建物の記憶に呼ばれる真百合。それぞれのお話は二人がそんな建物の思い残しを解決する形で、いわゆる幽霊モノの変則パターンみたいな物語になっています。そして真百合の過去、建築家だった祖父の過去といった所が大きな謎として見え隠れするのですが、その辺りは1巻ではまだ伏線がはられている段階。妹が持ち帰った写真はかなり火種になりそうな感じもしますが、それもこれからというところ。
なのでこの巻での魅力はやっぱり作者の古い建物への愛が見えることなのかなと。建物の持つ未練が描かれるのですが、人が使い込むことでそれ自体に刻まれた何かみたいなものが、ただ建材を組み立てただけでない建物の魅力みたいなのに繋がるのかなと感じます。絵が作りだす雰囲気も、そんな物語の空気に合っていました。